大切な人を守る気持ち。
「あれー、二人とも、きぐうね。」
しゅうなちゃんはわざとらしく言った。
俺は勇気を出して言ってみた。
「うん、本当にきぐうだね。」
「ゆな、あんたは何か言うことないの!?」
「ご、ご、ごめんなさい。本当にきぐうですね、しゅうなちゃん。」
ゆなちゃんは、すごくビクビクしていた。汗もいっぱいかいていた。
「ねぇゆな、あんたリストカットまたしたの?バカよね。」
しゅうなちゃんがゆなちゃんのリストバンドをはずして、手首をみた。
ゆなちゃんは、泣いていた。リストバンドを取り返すそぶりもなく、何も出来ずに、ずっと泣いていた。
それなのに、俺は何も出来ない。ただ、じっと見てるだけ。
俺に、生きる楽しさを教えてくれた、大切な人がそばで泣いているのに。
しかし、突然ゆなちゃんが小さな声で
「ゃ、めてくだ、さぃ。」
と言った。俺は驚いた。
「はぁ?ゆな、誰に言ってると思ってるの?」
「しゅ、しゅうなちゃんです・・・リストバンド、返してください!お願いします。」
「なっ、ゆなが私にくちごたえするなんて、またリストカットしてほしいの!?」
俺は、押さえられなくなり、つい、口を出してしまった。
「しゅうなちゃん、もうやめなよ。」
「あんたまでっ!?」
「俺だって人間だ!くちごたえだってする。俺は・・・俺とゆなちゃんは、もう一人じゃないんだ!ちゃんと、ここに居場所があるんだ!」
しゅうなちゃんは、口を開けたまま、俺を驚いたようにじっと見ていた。