プロローグ:あの日去ってしまった後輩の名前をもう誰も覚えてない
季節は春。
俺が春ケ丘高校に入学して二回目の春だ。
つまり今の俺は、高校二年生。
そして先程も話をしたが、俺は今、恋をしていない。
とにかく誰彼かまわず付き合って、よく分からないうちに
イチャイチャ、アハハウフフと、やりまくっているあいつ等とは違う。
やる? 何を? なんて野暮なことを俺は言わない。
短い学生時代にしか味わえないと思い込んでいる、嘘の賞味期限付きスイーツ。
甘い青春の香りに焦り、とにかく早めにたいらげてしまおうなんていう、
いやらしいマネをするおバカさん達とは違うのだ。
自分が本当に納得した人としか、付き合わないと決めている。
そしてそれは、この俺が部長を務める、
とある部活のメンバー達にも言えることだ。
その部活の名前とは
特殊恋愛サポート部
略してトクレン。
恋をサポートする部活とは書くが……
『さぁて! 今日も学園生徒の恋の悩みを、
かたっぱしから解決しちゃうぞ! てへぺろ☆!』
的な、よくある青春ラブコメお悩み解決部とはわけが違うと初めに言っておこう。
もしも……
もしもだ。
そんな普通のラブコメアニメ風、可愛い系ヒロインが
まかり間違ってでもラノベの世界をまたぎ、
ウチの部に迷い込んでしまったら――
まず間違いなく一瞬で心を闇に蝕まれ、
退部してまうだろう。
実際、この前、それっぽい元気系の後輩美少女が入部したが
あんなに笑って
「先輩、私、みんなの恋の太陽になります!」
とはしゃいでいたのに
半日もすると口角の端をピクリとも上げなくなり
視線も何だか、バイオなんとかで彷徨うゾンビのようにうつろい、
肩を落としたままゆらゆらと部室を出て、そのまま戻ってこなかった。
なんというか、ウチの部活は、ハードだ。
クセとか、ネタとか。もうなんか……もうヤバい。
まずはなんにしても、現場を見て頂いた方が早いと思う。






