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89.戦う前から

「さてと……じゃあ、わたしは『やることやってくる』から、任せたわよ」

「あれ、協力するんじゃないの!?」


 いきなりセンが駆け出していくのを見て、レインは驚きの声を上げた。

 ちらりと、センはこちらを振り返ると、


「わたしはわたしで、やることがあるのよ。すぐに戻るわ」


 そう答えて、あっという間に離れていく――が、その間にも早速何名かの参加者を蹴散らしていくのが見えた。

 彼女は彼女ので、フレメアの協力者に『姉』がいる。

 言葉から察するに、このゲームで決着をつけに行くということだろうか。

 だが、戦力的にもっとも強いセンが抜けてしまうのは、レインにとってはかなり痛手であった。性格は置いておいても、センはやはり《紅天》では一番の実力者だ。

 こうなると、近接戦闘に特化して残るのは、リースだけになってしまう。


「センの抜けた穴を私一人でカバーするのは難しいな――シトリア、頼めるか?」

「そうですね。私が出るしかないでしょう」


 リースの言葉に応えて、シトリアが前に出る。

 前衛はリースとシトリア、後衛はレインとエリィの四人構成だ。バランスとしては悪くないが――問題は敵の数だ。


『さあ、各地で戦闘が開始されていますが……多くの選手は一点を目掛けて移動している! これは、先ほどレースでは一位であった《紅天》のメンバーを狙っているのかぁ!』

『優勝候補を潰しておく、というのは立派な戦術であるな』


 そんな実況と解説の声がレインの耳にも届く。――やはり、フレメアの協力者達がレインの元へと向かってきている。

 ある意味では、ここで敵を多く減らすことができるチャンスではあるのだが、総力戦となれば人数差で押し切られる可能性が高い。


「ど、どうする……! 迎え撃つの!?」


 レインは慌てた様子でリースに問いかけるが、リースとシトリアは冷静な様子で状況を分析していた。


「エリィとレインの力なら、敵の数が多くても押し切れるか?」

「あちらも考えなしに真っ直ぐ向かっては来ないでしょうし……まともにやり合うのは不利ではないでしょうか。『水着を脱がせる』か『落とす』のが勝利条件なわけですから、現状ですと『風の魔法で押し切られる』可能性があります。かといって、中央付近に移動すれば囲われて不利になるでしょう」

「私と同じ見解だな。センなら正面突破の選択肢も入れてくるんだろうが、今は戦力的に難しいだろう」

「はい。何より大技で言えば、向こうにはレインさんの師であるフレメアさんがいらっしゃいます。レインさんの実力を考えれば、まだ彼女も全力を出していないことに違いはありませんし」

「そうなると――一先ずは逃げるのが正解か」

「そうしましょうか」


 リースとシトリアの話し合いが終わり、くるりとリースがレインの元へとやってくる。

 そのまま、リースは断りもなくレインを抱える形を取った。


「わっ!? え、どういうこと!?」

「結論から言うと、正面切っての戦闘は避けて、逃げながら戦うことにした。あまり数は減らせないだろうが、生き残る方針ということだな」

「それと僕を抱えることにどういう繋がりが……」

「君を一人で走らせたら転んで落ちそうじゃないか」

「うぐっ」


 全く持って否定できないところが悲しい事実である。落下したら敗北は、レインにとってはあまりに厳しすぎる勝利条件だ。

 しかし、あくまでそれはレイン単独であるという前提の話――リースに抱えられている状態であれば、少なくとも転んで落ちるというようなドジを踏むことはないだろう。


「後は水着が脱げないという方だが――さすがに一緒に行動していればすぐに脱げるようなことはないだろう」

「そ、そうだね。幸い、僕の水着は他の参加者と違って脱がされにくい――」


 ペリッ。


「……ペリ?」


 あまり聞きたくないような音がレイン達の耳に届く。

 ちらりと視線を送ると、案の定レインの水着が少し破けていた。

 丁度左肩の部分――先ほど、センに斬られてしまったところが、また切れてしまったのだ。


「あ、あれ……? ちゃんと直したはずなのに!?」

「戦闘開始前に破れるとは……もう片方も破れたらもう両手が使えないじゃないか」

「あんた……本当に運がないわね」


 リースとエリィの姉妹に揃って呆れられたような視線を向けられる。


「え、ええ……僕が悪いの、これ……?」

「レインさんの水着が脱げそうになることは想定内です。一先ずはここから移動しましょう」

「シトリアは冷静だね! と、とりあえず逃げようっ!」


 レインはシトリアの言葉に賛同する。

 今まで基本スタイルが『逃げ腰』であるレインの戦い方と、初めて《紅天》のメンバーの考えが一致した状況になる。だが、そんなことを喜んでいる暇もなく、すでにこちらに向かってくる参加者達の姿も見える。

――戦う前からハンデを背負いまくることになったレイン達の戦いが始まった。

水着が脱げたら負けのルールで戦う前から脱げそうになるのは当たり前なんですよね。

ちなみに肩のところが切られたのは84話です。


画面↓の☆でレインが勝てるように応援お願いします!(勝てるとは言っていない)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノリと雰囲気。 [気になる点] この設定だと、もっと男どもが寄って来ないとだし、リースの願いが強すぎた、ならそれなりにもっと強く来るとか、男どもから守ってるとかあると良い(?) [一言] …
[一言] ヨシッ! フレメア頑張れ! 脱がせ!
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