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85.くしゃみは攻撃魔法の一つ

 船上では逃げ場がない――当然のことだ。

 フレメアが船上へと降り立ち、レインと向かい合う。

 どこまでも余裕な笑みを浮かべるフレメアに対し、レインは冷静に周囲を確認した。

 どこもかしこも戦闘中――このままフレメアと戦って勝つことができれば、レインは晴れて完全な自由の身。

 だが、フレメアに勝つビジョンが浮かばない。


(ぐっ、一回も勝ったことないから勝ち方が分からない……けど、僕の今の魔力なら十分に対抗できる、はず)


 レインが操るのは氷魔法。フレメアが操る水魔法とは相対的に見ても相性がいい――だが、周囲はフレメアが得意とする水ばかり。

さらに、レインのそもそもの性格が災いする。

 基本的には危険なことを選ばない。可能な限り楽をして、勝利を手に入れる――状況が状況だけにレインが選ぶべきは可能な限り安全な道だ。

 そうなると、防御に徹してセンやリースの援護を待つ、というのが一番安全と言えるだろう。


(……よし、とにかく守る方向でいこう……!)

「決意を固めた、という目ね」


 フレメアがにやりと笑みを浮かべる。

 何も間違ってはいないが、レインの固めた決意はあくまで防戦に徹するということ。

 勝つ気はあるが、無理はしないというのがレインの取る戦闘スタイルだ。

 つまり、フレメアの期待するような展開は一切ない――はずなのだが、


「レイン、一人で戦うのは危険よ」

「! エリィ……!?」


 レインの隣にやってきたのはエリィだった。

 強い魔力を纏って、フレメアと対峙する――炎を使う魔導師であるエリィは、相性で言えばフレメアとはもっとも悪いと言える。

 それでも、臆することなく向かい合った。


「あら、私とやり合おうというの? 中々に腕は立つようだけれど……」

「レインは一応仲間なの。師匠だか何だか知らないけど、いつまでも弟子に執着しないでよ」

「いや一応って……」

「レイン、あんたもこの期に及んで逃げようとか考えてるんじゃないでしょうね?」

「っ! ま、まさか、そんなわけないじゃないか」


 エリィの問いかけに、レインは答える。……図星すぎて逆に清々しく嘘をついた。

 そんなレインとエリィを見て、くすりとフレメアが笑みを浮かべる。


「いいわよ。レインと二人でいらっしゃい。私は何人相手でも構わないもの」

「……随分と余裕ね」

「だって、あなたは炎の使い手でしょう? そこらの水使いならいざ知らず……私との戦いではいないようなものだわ」

「っ、言ってくれるじゃないの! レイン、いくわよ!」

「わ、分かった!」


 結局、エリィの言葉に呼応して、レインも戦うことになる。

 フレメアの煽りに乗せられるのは正直、あまり良い状況とは言えない。

 少なくとも――彼女の魔法の実力は本物なのだから。


「《フレア・バード》っ!」


 エリィが放ったのは鳥を象った炎の魔法。

 氷の戦場で火の魔法――一気に帆の部分が熱によって溶け始める。


「ちょ、エリィ! 火が……!」

「すぐにぶつけるから大丈夫よ!」

「いいえ――すぐに消してあげるわ。《アクア・スネーク》」


 水で構成された蛇が、エリィの作り出した火の鳥へと巻き付く。

 そして、周囲を蒸気が包み込んだ。

 強力な火の魔法と水の魔法がぶつかり合ったのだ――そんな中レインは、


「あっつぅ!?」


 がっつり蒸気に当てられて熱がっていた。

 スク水のため布面積は多い方なのだが、肌は人一倍弱い方である。

 そんな状況でも、レインは頑張って蒸気の中で視界を確保する。


(エリィと師匠は……!?)


 二人は向き合ったまま、お互いに魔法をぶつけ合おうとしていた。

 それはすなわち、もう一度強い蒸気が発生することを意味している。


「ちょ、エリィ! ぶつけ合うのはまずいって――」

「《フレイム・クロス》!」

「《ブルー・イクリプス》」

「あっつぅ!!」


 再び魔法と魔法のぶつかり合い――そして、蒸気の発生。

 レインは援護どころか、蒸気の中で熱さに耐えるのにいっぱいだった。……というか、レインの援護などまるで期待されていなかった。

 だが、他のメンバーは他のメンバーで気にせずに戦いを続けている。

 ここでレインが真っ先にできることは、


(と、とりあえず船直そう……!)


 エリィの魔法に当てられて溶け始めた船の修復だ。

 未だ完璧ではないとはいえ、レインもさすがにそれくらいの技術力は手に入れている。

 魔力を氷へと変換し、レインは船の修復を始める。


「は――くしゅんっ」


 そこで、見計らったかのようにくしゃみをするレイン。

 魔力のコントロールが思い切りズレて、戦場にレインの作り出した氷が広がった。

 ……すぐに反応できた冒険者はごくわずかだった。


「うわあああああっ!」


 船から氷の魔法によって突き飛ばされた冒険者達の声が響く。

 一度、フレメアも魔法を回避するために距離を取った。

 その瞬間を、エリィが見逃さず、


「一度距離を取るわっ!」


 後方に向かって大きく炎の魔法を放つ――それが船を加速させて、再びレイン達の船が一気に前に出る。

 船上に残るのはマクスとエイナに数人の冒険者だ。フレメアは一度、船から離れたため距離がある。

 ――ようやく、船上での戦いは落ち着きを見せつつあった。

めっちゃ遅くなってすみません!!!!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] バトルの描写もいいな…とか思ってたら最新話になってました…すっごい面白いです…
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