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83.戦場に立つ者

「変態ではないわ、美しいと呼びなさい」

「脈絡がなさすぎる!」


 目の前に現れた変態こと、マクスがポーズを取りながらレインの前に立つ。

 レインの突っ込みに対して、マクスは何故かポージングを変えながら答える。


「それに、変態はあなたの方じゃない?」

「な、なんでだよ」

「スク水に縄なんて、どう見ても変態じゃない」

「……っ!」

(た、確かに……!)


 レイン自身もマクスの指摘を受けて納得してしまう。

 今のレインの格好は、スク水状態で緊縛されている。

 それも、割りとがっつり動けないように。

 レインが落ちないようにするための配慮だろうが、今の状況では逃げることもできない。

 そんなレインを守るように、センがマクスの前に立つ。


「レインは変態ではないわ。ド変態よ」

「敵に便乗しないでよ!」

「猫の尻尾を付けるくらいだからな」

「そ、それも違うから!」


 何故か味方からの言葉による追撃を受けながらも、レインはやれることがない。

 ぐぬぬ、と表情だけは悔しそうにしているだけだ。

 そんなレインに対して同情したのか、マクスが口元に手を当てて、


「あなた、仲間と信頼関係築けてる?」

「一番まともな意見ありがとう! 築けてないよ!」

「レイン、お姉さんは悲しいわ。そんなことをレインが言うなんて……守るのやめようかしら」

「そういうところだよ!」


 敵を前にしてもセンは余裕の態度を崩さない。

 さすがSランクの冒険者といったところだろう。

 実際、リースもAランクの冒険者だ。

 マクス一人で相手取るのは無理があるだろう。


「うふふ、センにリース……アタシが勝てるとしたらリースの方かしら」

「……何?」

「リース、挑発よ」


 センの言葉は、リースを制止するものだ。

 珍しいこともあると感じた矢先、


「そのままぶっ飛ばしちゃいなさい」

「ああ!」


 相変わらずの脳筋である。

 リースが飛び出して、マクスとの距離を詰める。

 マクスは武器を持っていない――そうなると、考えられるタイプはいくつかある。


「ふんっ!」


 リースの突き出した槍を素手で掴んだ。

 リースが驚きの表情を見せる。

 魔力による肉体の強化――マクスは、近接型の魔導師だ。


(魔導師だとしたら、リースとの相性は悪い……!)


 レインも援護したいところだが、自由も効かない上に相変わらず力の加減ができない。

 センはというと、リースとマクスの戦いを見守るように動かない。


「セン! 何してるのさ!?」

「何って、レイン。あなたを守ってるのよ?」

「それよりも、リースの援護を……」

「そういうわけにもいかないの。敵は一人じゃないわ」

「え――」


 センの言葉と共に、船に次々と人影が現れた。

 いずれも、参加者の中にいた冒険者達だ――各々水着姿のまま、武器を構えている。


「結構な数ね。楽しくなってきたわ」

「……ど、どうしてこんなに……まさか!?」


 レインは何かに気付いたように上を見上げる。

 そこには、水の竜に乗ったフレメアの姿があった。


「師匠……!?」

「ふふっ、レイン……いつも言っているでしょう。敵はどこにいるか分からないのだから、気を抜くなって」


 その言葉は、まさに今の状況を指しているのだろう。

 審判やゲーム自体にイカサマを仕掛けているのではない――参加者の多くが、フレメアの協力者なのだと理解した。


「あら、あなた達……ここはアタシと《蒼銀》の戦場よ?」

「君は違うのかよ!」


 そんなレインの突っ込みが冴え渡り、戦いは開始された。

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― 新着の感想 ―
[良い点] マクス、魅力的なキャラクターですね
[良い点] いやマクスは違うんかーーい!!!
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