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102/103

102.空中戦の始まり

「……やっぱりやめた方がよくない?」


 いよいよ作戦実行――というところで、相変わらずレインの弱気な発言が光った。

 上に行くメンバーはフレメアを含めて紅天のメンバーと合わせて六人。

 レインの作り上げた氷の足場と、巨大な『アイス・ゴーレム』の準備はできた。

 全員が配置についたところで、やはり『上に投げる』という作戦は危険すぎる。


「また始まったわね、レイン……男らしくないわよ?」


 呆れたように、センが言う。

『男らしくない』と言えばいつでもレインが挑発に乗ると思ってはいけない。


「う、うるさいな。もっと安全な方法がないかって話を――」

「レイン」


 不意にレインの言葉を、フレメアが遮った。

 ビクリと身体を震わせて振り返ると、無表情のままレインを見つめる彼女の姿があった。


「分かるわね?」

「は、はい! やります!」


 何も言わずとも、彼女の言いたいことが分かる――これ以上、駄々をこねるようなことがあれば、今の作戦よりももっと悲惨なことが待っている、とフレメアは言いたいのだ。

 レインは『アイス・ゴーレム』を動かし始めた。ゆっくりと腕を振るい、勢いのままに――上空へとレイン達を放り投げる。


「やばい! は、速いよ、これ!」

「あんたが投げたんじゃない!」


 勢いのあまり涙目になるレインに対し、エリィの突っ込みが冴えわたる。

 レインとエリィは氷の足場に座り込んでいるが、残りのメンバーはこんな中でも立っていた。


「この速さならすぐに到着するな。私とセンは奴の背中に乗る!」

「羽根が斬れたら最高ってところね」

「私は二人を援護します」


 セン、リース、シトリアが『ブラッド・ビーク』の背中へと行く。

 残りの三人は魔法でとにかく攻撃をすることになる。

 当然、氷の足場に待機していられる時間はなく――攻撃をできる機会はほとんどない。

『ブラッド・ビーク』を地上に引きずり下ろすために、どれだけダメージを与えられるかの勝負になる。

 空中戦で仕留められれば御の字だが――それは難しい、という判断だ。


『――』


『ブラッド・ビーク』がこちらの動きに気付いた。

 大きな身体を旋回させると、両羽を大きく羽ばたかせる。

 逃げられる――そう思ったが、『ブラッド・ビーク』は巨大な羽根を飛び道具のように飛ばしてきたのだ。


「うわ、攻撃してきた!?」

「ちっ、イフリ――」

「『アクア・ランス』」


 エリィよりも早くフレメアが反応し、『ブラッド・ビーク』の攻撃を的確に迎撃していく――慌てる様子など微塵もなく、冷静な対応だった。


「さ、さすが師匠……!」

「驚いている暇があったらすぐに相手の動きに反応なさい。死にたくなけばね」


 やはり、フレメアは間違いなく魔導師としては最高峰で――レインなんかよりずっと強い。

 フレメアのおかげで『ブラッド・ビーク』を射程内まで捉えると、センとリースが動き出した。


「それじゃ、わたし達は先に行くわね!」

「え、まだ止まってない――のに!?」


 レインが言い終える前に、センとリースの二人は跳躍し――『ブラッド・ビーク』の背中へと降り立った。

 どこまでも行動の早い二人だ。


「私はもう少しだけ様子を見たら行こうと思います」

「う、うん。それがいいと思う……」


 シトリアは二人を見送りながらポツリと呟いて、レインも同意した。


「さ、やるわよ、リース」

「ああ、大物相手は腕が鳴るな」


 戦闘狂の二人が先陣を切り、戦い始まった。

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