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101/103

101.作戦

「作戦は単純。『ブラッド・ビーク』は上空にいる限り、こちらから手を出すことはできないわ。そして、奴が一番油断しているのは上空にいる時。だから、直接そこを叩くわ」

「直接叩く? そんなことが可能なのか?」


 フレメアの言葉に反応したのはリースだ。

 あまりに空高く飛翔している『ブラッド・ビーク』には、いかにフレメアと言えど魔法を届かせることはできないのだろう。

 そして、すぐに降りてこないのは――レイン達の戦闘を見たからだ。

 近づけば魔法での攻撃があるから、『ブラッド・ビーク』は攻め方を考えている。

 今、この瞬間が一番の隙というわけだ。


「レインの魔法で上まで行くわ」

「え、僕の魔法で? そんな魔法ないですけど……!?」


 急に振られ、レインは思わず驚きの声を上げる。

 確かに、レインの力は必要と言われたが――さすがにできないだってある。

 レインには異常な魔力があれど、氷の魔法は対空に優れているわけではないからだ。


「馬鹿ね。少しは頭を使いなさい」

「……いや、思いつかないです」

「はあ、分かったわ。やり方は単純、大きな『アイス・ゴーレム』を作りなさい」

「『アイス・ゴーレム』……? まあ、魔力を込めれば大きいのは作れますが……」

「そして、次に作るのは私達の乗る足場ね」

「足場……?」


 すでに嫌な予感しかしなかった。


「もう分かるでしょう。『アイス・ゴーレム』に投げさせるの」

「何を?」

「私達を足場ごと。こんなに細かく説明しないと分からない?」

「分かりたくなかったんですよ! これ師匠の作戦だってバカのやることじゃないです――いたいっ!」


 背中を思い切り、フレメアに叩かれて思わず叫ぶ。

 倒れたところを、さらにお尻まで引っぱたかれ、レインは涙目になりながら抗議する。


「布が薄いので本当にやめてください……!」

「あら、柔らかいから叩きやすくてよかったわ」

「わたしも叩いちゃおっと」


 パチン、とフレメアに比べれば優しいが、何故かセンがレインに追撃を加えた。


「なんで!?」

「ノリよ、ノリ。パーティ以外のメンバーがレインを叩いてるのにパーティメンバーが叩かないのはおかいいじゃない」

「言ってることが怖い!」

「すぐ話を脱線させない! つまり、レインの『アイス・ゴーレム』で全員を打ち上げて、上空で一気に決着をつける……そういうことでしょ?」


 エリィが問いかける。

 言葉にするのは簡単だが、場所は上空――はっきり言ってしまえば、相手の土俵に自ら突っ込むのだ。


「ええ、そういうこと。しかも、短期決戦ね。失敗したら、こっちが飛んでくることを学習するから、さらに高く飛ぶでしょうから」

「……上等じゃない。レイン、あんたがしっかり飛ばしなさいよ」


 エリィはやる気だ。

 思えば、エリィだってリースの妹――戦いを好むのは姉妹揃って同じということか。


「そうですね。動かれる前にやる……妥当な作戦でしょう」

「よし、話はまとまったな」

「楽しくなってきじゃない。お姉さん、頑張っちゃおうかしら」


 ――むしろ、レイン以外は全員やる気だった。

 だが、彼女達の言う通り、仕留めるのなら早い方がいいのだろう。


「ああ、もうっ。僕もやればいいんだろう? まったく……」

「なにちょっと怒ってるのよ。『ブラッド・ビーク』の討伐って結構お得じゃない」

「……どういうこと?」


 センの言葉に、レインは大きく反応した。


「冒険者いっぱい集めないと倒せないレベルの魔物なのよ? 素材だってかなり高く売れるわ」

「それ本当?」

「レアい魔物はみんなそうよ。やる気出た?」


 レインは小さく溜め息を吐き、それでも立ち上がって構える。


「べ、別にお金がほしいわけじゃないけど……まあ、やってやろうじゃないか」


 ――どう見てもお金が欲しいだけだが、レインのやる気はアップした。

コミックスの1巻が発売中ですので、よろしくお願いいたします~。

電子版も予約が始まりました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 こうお金が絡んで結局流されちゃうところが実にそれらしく良いです
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