修学旅行 2
我々を乗せ、バスは走り出す。車が動き出すと同時に若いバスガイドさんが挨拶をする。
「バスガイドの沢畑と申します。今日から1泊2日の旅行をご同行者させて頂きます。楽しい旅行にしましょうね」
お決まりと思われる挨拶が行われた。まだ慣れてないのだろうか少し弱々しい雰囲気があり、どことなく初々しい。
その点を見透かしたのか、クラスメイトからは
「おねーさん美人だね」「すげー胸が大きい」
と、好き放題の意見が放たれる。
バスガイドさんは、小学生の発言なので話しをさらりと流していたが、これが社会人なら完全にセクハラに当たるだろう。訴えられたら我がクラスは100%の確率で負けが確定だ。
そういえば、こういった趣旨の発言は美和子先生に向けられた事は無いように思える。上下関係と言おうか、主従関係のようなものが先生と生徒の間に出来上がっているのかもしれない。もしかしたら過去に生徒達にトラウマを植え付けるような出来事があったのかもしれないが、人生においては知らない方が良い事もあるので、私はあえて質問を投げるような事はしなかった。
わいわいと騒がしいバスの中、ようたくんは早くもお菓子を開けている。
いくらなんでも早すぎやしないだろうか、まだ旅は始まったばかりだというのに。
私はこれからの事を思い、友人に忠告をする。
「ようたくん、そんなペースで食べているとすぐにお菓子なくなるよ」
「大丈夫だよ、まだまだあるから」
そういってリュックの中を見せてくれる。たしかにお菓子が満載されているのだが、着替えはどこにあるのだろう?
まったく影も形も見えない。
「着替えはもってきたの?」
心配になり質問を投げる、すると
「こっちに入っているよ」
リュックのサイドについているポケットを指さすのだが、荷物を入れる場所を間違ってはいないだろうか。本来ならその狭いスペースにちょっとしたお菓子などを入れると思うのだが……
すこしあきれてしまったが、まあ、着替えがあるのなら問題はないだろう。
これが大人だけの旅行ならもうすこし落ち着きがある。
食欲などは二の次三の次で、秋の風景を味わう感慨深い旅になったに違いない。
そんな事を考えながら、バスの中に視線を巡らすと、美和子先生が柿ピーを食していた。その姿は、片手にビールでもあれば飲んでいそうな感じだ。
私は何も見なかったことにして視線を窓の外に移した。紅葉の始まった街路樹だけを眺めて時を過ごす。
少しでも旅の雰囲気を味わいたいのだが、チーズ味のスナック菓子の臭いが邪魔をしてくる。
この旅に旅情を求めるのは極めて困難かもしれない。
我々は日光に向かう前に寄り道をする。
一路、益子町へと向かう。




