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急げ! 一郎

作者: 鹿沼部直作

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

ペダルを一回転回すたびに腿が自転車と同じく軋むような感じがする。つまり腿めちゃ痛い。

物凄い形相で必死に自転車を漕いでいる僕の名前は長谷川一郎と言う。

何故僕がコレほど急いでいるのかいというと、そこにはマリアナ海溝より深く、エベレストより高く、太陽系より広い理由がある。

僕の現在の仕事は・・・していない。つまり、無職だ。いや、つい三日前までは働く気もなかったのでニートだ。ついでに言うと家の外はおろか部屋に引き篭もっていた引きこもりのニートだ。全社会人からの敵視されている存在である。

勿論、僕だって好き好んで社会の嫌われ者、引き篭もりのニートになったわけではない。それなりの理由があったのだ!

が、それはいずれ別の場所で語りたいと思う・・・・・・筈だと信じたい。

まぁまぁ、そんな過去のことなんてのはどうでもいいんだ。なんせ僕は今日から生まれ変わるのだからね。

きっかけなんては覚えてないが、ただ一つずっと漠然と思っていたのは、「本当にこのままでいいのか?」だ。

確かに今は両親がいるので生きていくことは出来るだろう、もし両親が死んだとしても生活保護だか何だかで生き延びることは可能かもしれない。だがそれで本当に良いのか? そんなんで人生満足なのか?

とまぁ、色々と綺麗事をみたいなことをほざいてみたが、嘘だ。

本当は欲しいゲームがあって親から小遣いをねだったが、親が小遣いがくれないので社会復帰とゲームを買うために勤労に勤しもうと企んだのだ。

しかしいきなりの正社員は時間的にも年齢的にも無理だと思った僕は、とりあえず2ちゃんねるで見た情報「コンビニの夜勤楽すぎwww」のスレをを信じコンビニの夜勤バイトに応募してみたのだ。

面接の時間は深夜なので夜にするのかと思っていたが、以外にも昼の3時からというなんとも微妙で時間に指定された。

前日の準備は万全だった。第一シーズンの金八先生みたいに長かった髪をバッサリと切り、面接のベスト返答と言う謎の本を100円で買って、寝る前まで読みふけったものだ。

それほどの準備をした前日だったが・・・僕は当日で大ポカしてしまった。

まずは寝坊、理由は目覚ましをかけ忘れてしまったという僕を影でせせら笑う“ご立派な社会人さま”でもしてしまう凡ミスだ。

しかし寝坊したと言っても、自転車で激走すれば間に合わない距離ではい。そうさ、まだ慌てる時間じゃない。

そして僕は簡単に身支度をキッチリ整えた後、自転車に跨がり家から爆走した。

おっ、これはギリギリだが間に合うな。と自転車を漕いでいた時のことだ、悲劇が起こったのは。

颯爽と走っている僕を警官があろうことか突然、僕の視界の前に現れ、(それだけでもうざい事この上ないのだが・・・)さらに止まるように指示してきたのだ。

僕は、まぁ、優しい男だからね。仕方なく止まってやったよっっ!!!

警官は防犯ナンバーを調べた後、僕の名前を聞いてきた。

僕は怒気を含んだ声で名前を伝え、「もう行ってもいいですかね?」と言った。

もうしばらく待ってくださいね。と爽やかな声で言ったあとに警官は無線で何かを話してた。

その後待つこと数十秒だろうか・・・・・・ご協力感謝しますと言い終える前に僕は再び爆走した。

ヤバイ、もうマズイ。3時まであと2分数十秒しかない。そしてここからは目標地点は、どう頑張っても5分以上はかかるということを僕は知っている。

だが僕は諦めない。諦めたら試合終了だって安西先生も言ってたから。

結局、着いたのは3時10分になっていた。

もうダメだろうなと思いながらも、僅かな望みに一途の望みを託しコンビニの自動ドアをくぐるのだった。






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