おや? 癒しの女神さまの様子が・・・
そろそろ冷え込みが激しくなって『そろそろおでんか肉まん出すか』と考えていたら、久しぶりにカエデちゃんが顔を出した。
『おじさん久しぶり!やっと魔王のいる大陸までたどり着いたよ』
『おう、久しぶりだな。ついに海を渡ったか。そっちの大陸だと今は夏で暑いだろ?』
『そうだね。久しぶりにおじさんのカレーが食べたくなったから来たの』
そういってカエデちゃんは笑顔を浮かべながら席に着いた。前までハーレムについて悩んでいたが何か吹っ切れたのかいい笑顔だ。
『そうかい、じゃあ用意するから待ってな。ところで食材の買い込みはどうする?』
『ん~、今人が多いから私が楽しむ分だけにするよ』
......あれ、アマミヤ君の分は? まぁ心境の変化があったみたいなので何もいわないでおこうと、俺はカレーの準備に戻ったのだった。
季節は巡り命が芽吹く、男の子供たちも独り立ちしてついに孫ができたそうだ。前世で俺にも孫がいたんだが、死んだときには2歳だったか?かわいい盛りでよく相手をしたもんだ。まぁこちらではなかなか会いに行くことができないのが普通だが、俺たち転生者は大体転移魔法が使えるので問題がないのだとか・・・
『大将、孫はかわいいな。孫のためなら一国ぐらい落としても全然大丈夫だよな?』
『孫がかわいいのは認めるがなにとち狂ってんだよ。まぁ男の場合、嫁のためにすでに2~3国落としてるから余計にたちが悪いわ!』
『いや~、おれもあの時は若かった。まぁ今ならもっといけるがな!』
そう、この男奴隷嫁のために小国ではあるが国を落しているのだ。まぁ俺にであう前のことで詳しくは知らないが、小国のばか貴族やボンボン王子が絡んできて奴隷嫁を差し出せとかわめいたのでちょっと城をふっとばしたり、保有していた軍隊を壊滅させたのだとか。 今ではこの通りの中年おっさんだが怒らすと怖い相手なのだ。
そんな話をカエデちゃんが横で聞いていた。
『すごいな~。そんなに奥さん愛されててうらやましいです。私も私のことをちゃんと見てくれて考えてくれる人がいたらなぁ』
『がっはっは! なら大将はどうだい? 中身はおっさんだが今じゃ美形のエルフ様だし、腕っぷしもかなりのもんだ。しかも料理の腕は超一流だからかなりのお買い得物件だと思うぞ? ああでもヒカルのやつがいたんだったな、こりゃすまねぇ。』
ボソッ『大将さんか~、いいかも…』
『ん? 俺がなんだって?』
『なに、カエデの嬢ちゃんがヒカルの奴にもっと私のこと考えてほしいといってたんでな。だったらもういっそのこと大将に乗り換えちまいなと思ったんだが、こういうのは感情の問題だから無理じゃねぇかと思っただけだ』
そういって男は熱燗をキュッと飲み干した。
『何言ってんだか、俺はこう見えてもいい年したおっさんだぞ。まぁカエデちゃんのことは気にかけているが、それは小さいころから知っているし家族愛みたいなもんだ。それにカエデちゃんにはヒカルがいるだろ』
そんな話を男としている横でカエデちゃんは俺を見ながら『ウンイイネ』とかつぶやいていた。