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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
烏合之衆
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安息

今回はアクションですかね。

ゾンビ物定番のショッピングモールです。

どうぞお楽しみください。

「リーダー!車が来た!」


ドタドタと、トレスショッピングモールの屋上から肥った男が走ってきた。


「ほう、車ですか。」


「一台で、自衛隊の車でした!」


「…自衛隊が一台でわざわざ救助に来るはずがない。避難民ですね。」


「いかがいたしましょう?」


「決まっているでしょう?皆を集めてください。歓迎パーティーの時間です。」












一方。


「悠斗君!あれ!」


「あぁ、解ってる。」


麗香が指差して方向にあるのはショッピングモール。確か、トレスという名前だったはずだ。


普通なら、人が集まっている場所で今ならゾンビの大バーゲンセール中なのだろうが、そうではない。


トレスの屋上で人が手を振っているのだ。それも10人ほど。


「どうする?悠斗君。」


「いったん寄ってみて、安全そうだったら保護してもらうかな。ヤバそうだったら無視しよう。」


といいハンドルを切る。


角を曲がってトレスを目指すが、ゾンビが増えてきた。


「ァぁぁぁ~…ウぅぅぅ。」


「邪魔だッ!」


アクセルを踏み、吹き飛ばす。


麗香はトレスの屋上で人が必死に右を差しているのを見た。


「悠斗君!右にまがって!」


「あいよッ!」


右に曲がり、少し狭い道に出る。


「次の信号を左に曲がればトレスの裏口に出るはず!」


「了解!」


ややスリップ気味に角を曲がる。


トレスの裏口で、手を振っている人がいる。


バリケードの一部が開閉式になってるようだ。


だが、すでにゾンビがその入口に集まって壁を形成している。


「ゾンビが多い!ここからは無理だよ、悠斗君!」


「麗香!何かに掴まってろ!このまま突ッ切る!」


「そんなの出来っキャァァァァァァァァァァァァ!!!」


麗香が何か言いかけたようだが無視してアクセルを全開にする。


不意に爆発音がして前を見ると、ゾンビの壁に突破口が開いている。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


そして車は、ゾンビを弾き飛ばしながら入口に突入して止まった。


トレスの人がバリケードを閉めて大きく息をつく。


もちろん車内の二人も例外ではなかった。


















「大丈夫か?」


と中年の男性に聞かれる。


「あぁ、なんとか。」


悠斗は答えると、ゾンビを撥ねた衝撃で痛む尻を擦りながら車から降りた。


麗香も無事なようだ。


バリケードにいた他の人も集まってきた。


悠斗と麗香の周りにはあっという間に人だかりができた。


皆で成功を喜んでいると、長身の男と太った男がトレスから出てきた。


『あれがここトレスのリーダー。尾西(おにし)だ。』


中年の男性が耳打ちする。一呼吸おいて長身の方が口を開いた。


「ようこそ、トレスへ。私はこのコミュティのリーダーを勤めております、尾西 卓巳(おにし たくみ)と申します。これからよろしく。」


慇懃な態度に少し嫌気がさしたが、これからの生活に支障が出るとマズイ。ここは大人しく名乗ることにする。


「槇原悠斗です。こっちは麗香。」


「では、簡単にこのトレスやコミュニティの事を説明します。ついてきてください。」


尾西は後ろに向き直って歩き出したので、悠斗もそれに従った。












トレスは最近出来たばかりのショッピングモールで、食料品店からおもちゃ屋、ホームセンターまである。


このトレスには悠斗と麗香を含め現在23名が居るそうだ。


コミュニティの人については後々紹介するらしい。


食料の備蓄は万全で4か月は平和だった時と同じくらい食べても大丈夫だそうだ。


切り詰めれば一年は持つだろう。


水も豊富にあり、大半を飲み水に回せばこれまた一年は持つとの算段らしい。


しかし、閉所にいてはストレスが溜まる。


なので、指定されたもの以外は自由に持ち運びして良いそうだ。


バリケードは強固で、補修も毎日しているらしい。


悠斗たちの車に積んであった物資は、銃と弾薬、食料と水以外ははすべて悠斗たちが自由に使える。


逆に言えば銃も弾薬もすべて奪われたという事だが。


「悠斗君。銃、取られちゃったね…。」


「ふっふっふ。甘いな。麗香よ!」


「えっ!」


「この制服の裏側にある布をちょいと引っ張ると…。」


「隠しポケット!」


「中身はもちろんマガジンと弾の入った箱です!」


「すごい!銃は?」


「銃はホレ。この通り。」


といい脹脛をポンと叩く。


よく見ると、少し盛り上がっていた。恐らくテープか何かで固定してあるのだろう。


「ま、ショットガンはさすがに奪われたけどな。手榴弾は持ってくる隙がなかった。」


「それでもすごいよ!」


そして悠斗と麗香は、自分たちに宛がわれた部屋の前に来た。


「『スタッフ仮眠室』ねぇ。」


戸を開けると、8畳ほどの部屋にベッドが………。


「一つだけ…だと…?」


恐らく他のコミュニティの人たちが自分の部屋用に持って行ったのだろう。


(どうするか…?家具店からソファでも持ってくるか。)


「麗香、荷物の整理してくれ。俺はソファを持ってくる。」


「あっ…。あの!」


「何?」


「…いや、何でもないよ。」


「なんかあったら言えよ?」


という事で、悠斗は布団とソファを求めて部屋を出た。























何故だ。


何故家具店にソファの一つもない。


椅子はたくさんあるが、何故。何故ソファだけないのだ。


(…床で寝るか。)


と思い、布団を六枚たたんで部屋に戻る。


「ただいま…。」


「お帰り!あれ、ソファは?」


「無かった。ソファだけ無かった。今日は床で寝るよ。」


「あっ!あのっ!悠斗…君…?」


「ん?」


「その…悠斗君さえ良ければ、一緒に寝ても………。///」


「え~っとそれってつまり…?」


「一緒に…寝よ?///」


「添い寝…だと…?」


「ダメ…?///」


いやいや。頬を赤らめながら上目使いは反則だから。


ていうか俺高校生よ?一番危険なお年頃よ?


落ち着け、俺。俺には鉄壁の理性があるはず!


「ま、まぁ俺は別にいいけど。」












と、いうわけで。


夕飯を終えた悠斗と麗香は、同じ布団に入ることになった。


今現在の状況を説明すると、壁側を向いた悠斗の後ろに麗香がすっぽり収まってるような感じである。


(…やばい。後ろ向けない。)


「悠斗君…。」


麗香の息が首筋に当たる。


「ふぁあいっ!」


と声が裏返ってしまった。


「私…付き合ってる人がいるの。」


「はぁ。」


特に驚かない。これだけの美人をほっとく馬鹿がどこにいると。


「でも、その付き合ってる人は助けに来てくれなかった。」


あれだけの騒ぎで助ける方がすごいが。


「だけど…だけど、悠斗君は私を助けてくれた!」


ほとんど偶然だったんだけどね。


「悠斗君が居なかったら、私、今頃あいつらと同じになってる。」


でしょうな。女の子一人で生きていけるような状況じゃないし。


でもそれは口に出せない。


「そんなことないよ。俺だって麗香を危険な目にあわせたし。」


とりあえず無難に返す。


すると、麗香が悠斗の体を抱きしめた。痛いぐらいに。


「だから…だから…。私は、悠斗君を支えたい。悠斗君と一緒に…生きたいの…。」


「麗香…。」


悠斗が後ろを振り返り、麗香を見つめる。


麗香も見つめ返す。


そして、麗香が顔を近づけて…。


「ちょっとストップ!」


悠斗が声を上げる。


「そういうのは、一応彼氏さんの許可を得ないと…な?」


「私じゃ、ダメ?」


だーかーらー!上目遣いはやめてくれ!


「ダメじゃない!ダメじゃない!」


「だったら…。」


「…キス…だけな。」


麗香が再度顔を近づけ、唇を…。


ポスッ。


「…あれ?麗香?」


麗香は枕に顔をうずめて動かない。


「…寝た、か。」


悠斗も安堵と悲哀の入り混じった感情を胸に枕に顔をうずめた。


月がゆっくりと二人を映し出し、そして雲に隠れた。












































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