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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
阿鼻叫喚
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外道

今回はいよいよ危ない人たちのご登場です。

ご都合主義が入りますのでご注意を。

翌朝。


鳥の鳴き声とともに悠斗は目を覚ました。


「朝だな。」


溶接された天井に付いていた天窓を開け、空気の入れ替えも兼ねて周囲の警戒をする。


幸い周囲にゾンビの影はなかった。しかし道で何かが動いている。


「なんだ?」


よく見ると、それは猫であった。


(なるほど………猫が大手を振って歩けるということはゾンビは人以外の動物は襲わないと考えるのが妥当か。)


そんなことを思いながら麗香の方を向く。


麗香はまだ寝ていた。


やべぇ。可愛い。


今までの世界では考えられなかった距離にいる麗香を見て、少しゾンビに感謝した。


(しっかし、起こすのも可哀想だな。もうしばらく寝かしといてやるか。)


自分は紳士だ。寝込みを襲ったりしない。誓ってしない。多分。


自分にそう言い聞かせながら、スーパーを少し探索しようとSAKURAに手を伸ばした。


マガジンに弾が入っているのを確認すると、バールをベルトに提げてドアを開けた。















(やっぱり水は欲しいよな。…食料も取れる時に頂戴しとかないと。)


本来なら10人の大家族が一週間に消費しそうなほどの量の食料をカートに詰めながら考える。


レジの前を通ると、『昔ながらのおもちゃコーナー』という名目で子供向けのおもちゃが並んでいた。


何気なく物色すると、かんしゃく玉があった。


「よく近所の犬にぶつけてたっけな~。」


と呟きながらポケットに2袋入れた。









暫く立って買物ぬすみを終えた悠斗は信じられない光景を見ることになった。


(マズイな………。)


自分たちの乗ってきた車の周りに人影がある。よく見ると、ゾンビではなく人間である。


普通なら喜ぶところだが、金髪に染めた若い男の二人組である。おまけに一人はナイフ、一人はニューナンブを持っている。


(話し合いはできそうにないし、ここはそっと忍び寄って殺すしかないよな。2対1になったら負けるだろうし。)


と思いながら歩き出した。が、足元に転がっていた空き缶に気が付かずに蹴飛ばしてしまった。


「…あちゃ~。やっちゃった。」


金髪の男が二人ともこっちを向く。


「誰だ!?おとなしく出てこい!」


悠斗は仕方なく金髪の男たちに姿を現した。


「なんだ?おめぇはよォ!」


やはり話し合いの余地はないようだ。


「まぁまてよ、近藤。」


「なんだ?吉川。」


「学生がこんなところに一人でいるはずがねぇからな。こいつはもしかしてあの車の持ち主なんじゃねぇか?」


「なるほどな。そうなのか?なんとか言えやこらァ!!!」


「……あぁ、そうだよ。」


「とっとと鍵と女置いて失せな。命だけは助けてやる。」


(………嘘だな。鍵を渡したら殺すつもりだ。さて、どうするか…。)


悩んでいると、近藤と呼ばれた男が近づいてきて、悠斗の頬をナイフの側面でたたき始めた。


「おい、早くしねぇと今すぐ殺すぞ?」


(…なるようになるか!)


と悠斗は腹をくくった。


そっとSAKURAに手を伸ばすと、グリップを握り締めた。


そして。


「黙れゴリラ。お前の居場所は動物園だろ?おとなしく檻に入ってろ。」


沈黙。近藤のこめかみに血管がはしる。


「てめぇぇぇ!!!」


近藤が我を忘れているチャンスを逃さず、悠斗は落ち着いてSAKURAを近藤の顎に押し当てる。


ゴリッ。


「ゴリッ?」


そして只々冷静に引き金を引いた。


ブシッ!


顎を突き抜けた弾丸が頭頂部に達し、脳漿がコンクリートの駐車場にぶちまけられた。


悠斗は凭れかかるようにして倒れてきた近藤をしっかりと両手で支えた。


「近藤ォッ!くっ、このガキッ!」


吉川がニューナンブを取り出す。


その動きを悠斗は見越していた。


パン!


放たれた弾丸を近藤の死体を盾にして防ぎ、


近くの物陰に身を隠した。


(銃を持ってる方を先に殺るつもりだったが、まぁ上手くいったな…。さて、あいつをどうするか。)


物陰から少し顔を出すと、吉川がすぐさま物陰に身を隠すのが見えた。


(一計案じてみるかな?)


と悠斗はポケットに手を伸ばした。
























「なんなんだ?あのガキ!近藤を殺りやがった!!!」


とニューナンブを握り締めた男━━━━吉川は吐き捨てた。


「あのガキをどうやってぶっ殺すか。理詰めでいきゃあガキの弾が無くなるのを待つんだろうが…。」


(あいつの銃はSAKURAに見えた。恐らくガキはすぐ戻るつもりだったはずだ。女を置いてきてるからな。なら、弾数は予備無しの5発だ。)


パン!


「ガキが撃ちやがった!恐怖に駆られたか?あとあいつは三発しかねぇはずだ!」


パン!


「二…。」


パン!


「一…。」


パン!


口角が吊り上がる。


「零…ッ!」


吉川は立ち上がると、ゆっくりと悠斗が隠れた物陰に近づく。


「出てこいよ。弾が無ぇのは解ってんだ。」


しかし、出てこない。


「三秒数える前に出てこい。さもないと撃つぞ?」


出てこない。


「さ~ん…。」


静寂。


「に~ぃ。」


(何故でてこねぇ?)


「い~ち!」


パン!


不意に腹が熱くなる。


「え?」


自分の腹を見ると、穴が開いていて血が噴き出している。無意識に腹を手で押さえ、地面に倒れる。


(なんでだ?弾は全部撃ち尽くしたはず…。なの…に…。)


薄れゆく意識の中で最後に見たもの。それは心の奥から愉快そうに笑う一人の少年の顔であった………。




































「ふぅ~い。上手くいったぜ。」


悠斗は溜っていた緊張感を吐き出しながら、ポケットに入っていたかんしゃく玉を取り出した。


(向こうも切羽詰ってるだろうから、銃声と間違えてくれると思ったが…どうやら本当に間違えたらしいな。)


銃を拾ってカートが置いてあるスーパーの入り口に戻り、物資を全て後部座席に詰め込む。


「うぅ…ん…。悠斗、くん…?」


麗香がようやく目を覚ましたようだ。


「おはよう、麗香。」


麗香は暫く寝ぼけたような表情をしていたが、悠斗を見て目を見開いた。


「ゆ、悠斗君?何かあったの?」


(あぁ、そうか。俺返り血浴びまくってんじゃん。)


「大丈夫?」


心配そうに麗香が見つめてきた。


だから、悠斗は笑って言ってやった。


「なぁに…朝飯前さ。」

























































































少し最後のシメの部分を洋物映画風にしてみました。

ご意見、ご感想お待ちしております。


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