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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
百折不撓
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終幕

最終話です。

━宮本琢磨の場合━


十年後。


東北自衛隊基地執務室。


「ふぅ……やっと終わった。」


僕、宮本琢磨は息をつく。


数日かけて書いた今回の食料確保遠征の結果を報告書にまとめていたのだ。


「あら?あなた。お仕事は終わったの?」


僕にこう微笑みかけてくれる女性。


僕の妻であり、十年前僕達と共に戦い、瀕死の重傷を負った女性。


名を、伊吹雨音という。


「うん。やっとね。」


「だったら~!」


妻が僕に抱き着いてくる。


「どどどどどうしたんだいいいい!?」


「久々にイチャイチャしよーーう!」


「うわわわぁっ!?」


……今日も執務室は大賑わいです。
















━大関陸男の場合━


「この地域の制圧は完了した。指示を頼む。」


『そうか。ご苦労だった。では、少し南下してくれ。ただし、今日はそこで休息を取るんだ。』


「了解。」


あれから十年たった。


私は今、東北自衛隊基地の領域の拡張をしている。


領域外にはゾンビや帝国の残党がいまだに残っている。


「隊長!ヘリが来ました!」


「解った。すぐ行く。」


ヘリに向かって歩き出す。


「ところで隊長!」


「ん?どうした?」


「やはり新婚というのは良いものですか?」


「全く……任務に関係ないことはしゃべるな。貴様も結婚すればわかる。」


ヘリを見ると、ひとりの女性が手を振っている。


「大関さ~~ん!」


その姿は、見間違えるはずがない。


十年前、自分が鉄砲店で救出した女性。


その女性曰く散々アピールしていたらしいのだが、思いを伝えるまで全くわからなかった。


大関は少し俯くと呟くように言った。


「良いに決まってるだろう?」



















━山本巌の場合━


「よっこらせ!」


大きな工具箱を車の横に置く。


そして工具箱を開けると、様々な工具を取り出し、車をいじりだす。


「もぉ~~!お父さんったら、また車いじってる!」


「ガッハッハ!少しくらいいいだろ?奈々。」


奈々と呼ばれた若い女性は頬を膨らませる。


「お父さんったらそればっかり!」


「ハハハ……俺も年を取ったからな。少し位人生を楽しんだっていいだろう。」


「まぁ……ね。」


奈々がソワソワしている。


「ん?どうした?トイレにでも行きたいのか?」


「ッ!違うもん!もう……本当にデリカシーがないんだから!はい!コレ!」


奈々が山本に腕時計を渡す。


「なんだこれ?」


「だから!もぅ!今日はお父さんの誕生日でしょ!」


「んあ?そうだったっけか?」


「そうよ!」


「そっか。ありがとな。」


腕時計を手にはめる。


不思議とぴったりだった。


「その、お父さん。……いつもありがとう。」


「…………お前、照れてるな?」


「ッ!もう!お父さんなんか知らない!」


奈々が走っていく。


(やれやれ、こりゃ謝らにゃならんな。)


そう思いながら腰を上げた。


「よっこらせ!」















━村下英俊の場合━


「いいかい?僕たちがどれだけ情報を集められるかが前線の兵士の生還率を左右するんだ。迅速に、正確に情報を集めよう。」


「了解!」


僕は今東北自衛隊基地の通信指令室にいる。


情報とはなんたるかを教えているのだが、だんだん兵士の年齢層が若くなっていくのがわかる。


これ以上若い者が戦場に駆り出されないように出来るだけ早く安全な土地を手に入れる必要がある。


そのためにも、Uシリーズの情報は欠かせない。


「Uー12の情報入りました!現在交戦中!」


兵士の一人が声を上げる。


「対策№154を指示しろ!」


「はい!対策№154を命ずる!」


数分後、何とか敵を撃破し後の情報がはいり、全員から安堵の声が聞こえる。


その様子を見ながらふと思う。


「悠斗君、麗香君。君たちは今どこに……?」















━????の場合━


長野県山中。


山小屋。


「ねぇねぇパパ!」


長男が呼んできたので、振り向く。


「ん?どうかしたか?」


「薪拾ってきたよ!」


「おお!良くやったな!よしよし偉いぞ!」


そういって我が子の頭をなでる。


「えへへ~!」


ご満悦だ。


その直後、大きな音がして玄関の扉が開く。


「大変なの!怖い人たちが来たの!ママがパパに知らせろって……!」


長女が青ざめた顔でやってくる。


「解った。荷物をまとめといてくれ。」


「うん!わかった!」


長女が荷物をまとめている間に、ベッドの下から銃を取り出す。


「パパ~?何かあったの?」


「う~んとな。引越しするんだ。」


「引越しするの?やったぁ!」


本来なら、子供には奴らのいない時代を生きてほしかったが、ぜいたくは言えない。


せめて、戦えるようになるまでは養わないといけない。


「すぐ戻る!」


そう言い残して家を出る。


暫く走ると、妻がゾンビと銃で戦っていた。


「遅くなってすまん。」


「ゆうt……あなた!」


「家に戻って、引っ越しの準備をしてくれ。」


「わかったわ!」


そういって踵を返し、走っていく。


その様子を見届けると、ゾンビに向き直る。


「さぁ……てと。」


あの日から十年。


この世界を生き抜き、子供もできた。


きっと、これからも自分はこの世界を生き抜いていくのだろう。


そして、自分の生き方は、信念は子供たちに受け継がれていく。


そうして生命は永遠につながり続けるのだ。


自分が死ぬのは、世界で最後から四番目だ。


銃を構える。


その銃には『YU-TO』の文字が。


引き金に力を込める。


「久々のショータイムだぜ!」


ダァァァァーー………ァァン












これで完結です!

この作品を読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!

また、活動報告に色々と書かせていただきます。


本当に、ありがとうございました!


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