海戦
少し短いです。
『魚雷命中!』
東北の基地の所有する潜水艦内に、歓声が湧き上がる。
「よし、三番、四番魚雷発射管開け!」
「了解!」
低い音が鳴り、魚雷の発射体制が整う。
「照準良し!」
「発射!」
シューシューと音を出しながら、魚雷が海中を進む。
『敵艦、魚雷迎撃。命中せず。』
暫くすると、通信が入る。
外れたらしい。
「敵もなかなかやるな……。相手にとって不足はない。五番、六番魚雷発射管を………。」
『敵魚雷接近━━━!』
その直後、潜水艦に魚雷が命中し、信じられないほどの衝撃が艦を襲った。
「ぐ……ぅぅぅう……。」
辛うじて起き上がった者が見た光景は、倒れ伏す仲間と入り込む水だった。
『敵潜水艦撃破!』
「いいぞ!」
くらまをはじめとする帝国海軍が歓声を上げる。
だが、戦闘に勝利したわけではない。
「主砲照準!目標敵三番艦“はたかぜ”!」
敵を一体ずつ確実につぶす。
「撃てぇぇぇぇッ!」
ドォンドォンと、断続的に音が聞こえ、暫くすると、“はたかぜ”の周りに水柱が上がり始めた。
やがて、砲弾が“はたかぜ”を捉え、船の側面に穴をうがち、主砲を破壊し、海に沈めた。
「“はたかぜ”撃沈!やりました!」
「やったぞ!次だ!」
またもや歓声が上がる。
東北航空隊。
編隊を組みながら目標に接近する。
やがて、海戦の様子がおぼろげながら見えてきた。
「あれはッ!」
幾多もの艦が黒煙を噴き上げ、火柱を上げながら撃ち合い、沈めあっている。
まるで、第二次世界大戦時の映像を見ているかのようだ。
『味方を援護する。91式空対艦誘導弾用意。』
『了解。』
『射程圏内に入った。発射。』
淡々とした声で攻撃命令が出る。
だが、自分がボタンを押せば、あの艦にいる人々は一瞬にして死んでしまうだろう。
そんな重荷を背負うには、このパイロットは若すぎた。
「撃てるかよ……撃てるかよ……!」
次々とミサイルが発射されていく。
だが、どうしてもボタンを押せない。
『六番機。91式空対艦誘導弾を早く発射せよ。』
「撃てるかよ!こんなボタン一個で何百人も死んじまうんだぞ!こんなボタンを押せるあんたらの頭がおかしいんだよ!」
『それは甘えだ。早く……。』
「無理だよ!俺には無理だ!」
その直後、警報が鳴り、気が付いた時にはすでにミサイルが命中していた。
「うわああっぁぁぁああああッ!?!?」
一瞬にしてコックピットが炎に包まれる。
そうだ。
この世界では撃たない者は撃たれるのだ。
そして、その原則を忘れたものに未来はない。
このパイロットはそのことを悟った。
そして、狂った笑みを浮かべ、ボタンを押すと、火だるまになって海に突っ込んでいった。
数十分もたつと、戦闘はほぼ終了した。
東北の部隊が、これ以上の進行は不可能と判断し、撤退したのだ。
だが、帝国海軍も多大な被害をこうむった。
まともに動けるのは“くらま”ぐらいのものであり、ほとんどの艦は曳航を必要としたり、機関が停止し、沈みかかっていた。
しかしそれでも、帝国海軍は東北の軍の当初の予定であった、海上からの援護攻撃を妨害したのだ。
果たして、これにより戦局がどう変わるかは誰にもわからない。




