表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
百折不撓
53/64

海戦

少し短いです。

『魚雷命中!』


東北の基地の所有する潜水艦内に、歓声が湧き上がる。


「よし、三番、四番魚雷発射管開け!」


「了解!」


低い音が鳴り、魚雷の発射体制が整う。


「照準良し!」


「発射!」


シューシューと音を出しながら、魚雷が海中を進む。


『敵艦、魚雷迎撃。命中せず。』


暫くすると、通信が入る。


外れたらしい。


「敵もなかなかやるな……。相手にとって不足はない。五番、六番魚雷発射管を………。」


『敵魚雷接近━━━!』


その直後、潜水艦に魚雷が命中し、信じられないほどの衝撃が艦を襲った。


「ぐ……ぅぅぅう……。」


辛うじて起き上がった者が見た光景は、倒れ伏す仲間と入り込む水だった。















『敵潜水艦撃破!』


「いいぞ!」


くらまをはじめとする帝国海軍が歓声を上げる。


だが、戦闘に勝利したわけではない。


「主砲照準!目標敵三番艦“はたかぜ”!」


敵を一体ずつ確実につぶす。


「撃てぇぇぇぇッ!」


ドォンドォンと、断続的に音が聞こえ、暫くすると、“はたかぜ”の周りに水柱が上がり始めた。


やがて、砲弾が“はたかぜ”を捉え、船の側面に穴をうがち、主砲を破壊し、海に沈めた。


「“はたかぜ”撃沈!やりました!」


「やったぞ!次だ!」


またもや歓声が上がる。











東北航空隊。


編隊を組みながら目標に接近する。


やがて、海戦の様子がおぼろげながら見えてきた。


「あれはッ!」


幾多もの艦が黒煙を噴き上げ、火柱を上げながら撃ち合い、沈めあっている。


まるで、第二次世界大戦時の映像を見ているかのようだ。


『味方を援護する。91式空対艦誘導弾用意。』


『了解。』


『射程圏内に入った。発射。』


淡々とした声で攻撃命令が出る。


だが、自分がボタンを押せば、あの艦にいる人々は一瞬にして死んでしまうだろう。


そんな重荷を背負うには、このパイロットは若すぎた。


「撃てるかよ……撃てるかよ……!」


次々とミサイルが発射されていく。


だが、どうしてもボタンを押せない。


『六番機。91式空対艦誘導弾を早く発射せよ。』


「撃てるかよ!こんなボタン一個で何百人も死んじまうんだぞ!こんなボタンを押せるあんたらの頭がおかしいんだよ!」


『それは甘えだ。早く……。』


「無理だよ!俺には無理だ!」


その直後、警報が鳴り、気が付いた時にはすでにミサイルが命中していた。


「うわああっぁぁぁああああッ!?!?」


一瞬にしてコックピットが炎に包まれる。


そうだ。


この世界では撃たない者は撃たれるのだ。


そして、その原則を忘れたものに未来はない。


このパイロットはそのことを悟った。


そして、狂った笑みを浮かべ、ボタンを押すと、火だるまになって海に突っ込んでいった。


数十分もたつと、戦闘はほぼ終了した。


東北の部隊が、これ以上の進行は不可能と判断し、撤退したのだ。


だが、帝国海軍も多大な被害をこうむった。


まともに動けるのは“くらま”ぐらいのものであり、ほとんどの艦は曳航を必要としたり、機関が停止し、沈みかかっていた。


しかしそれでも、帝国海軍は東北の軍の当初の予定であった、海上からの援護攻撃を妨害したのだ。


果たして、これにより戦局がどう変わるかは誰にもわからない。




















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ