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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
阿鼻叫喚
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物色

今回はほとんど武器の製造です。


技術室に入り、静かに鍵をかける。


誰かいないかくまなく探したが、誰も居なかった。


「さ~て。そんじゃ始めますか。」


と、空き巣のように部屋を物色する。


こうすると、誰も見ているはずはないというのにどことなく落ち着かなくなる。


日本人の性であろう。いや、日本人でなくともか。


そんなことを思いながら使えそうなものをリストアップしていく。ノートと鉛筆はやはり持ってきてよかったと感じた。


(ボンド…。何かに使えそうだな。釘はもちろん欲しいし、バールも。・・・おっ!)


その視線の先にあったのは、さすまたであった。


あれならリーチは長い。いい武器になるぞ。とさすまたに手を伸ばす。








リストアップしたものを工具台の上に乗せる。


置いたのは、ハンマー、木材、釘、ボンド、糸鋸、鑢、バール、さすまた、そしてオイルである。


オイルは、物を燃やすのに必要だと思ったので、技術の林先生が愛用していた頑丈なリュックサックに入れる。


林先生はあの放送の時に、教頭を襲ったようだったからすでに生きてはいないだろう。歩いてはいるかもしれないが。


林先生。ご冥福をお祈りします。


(気を取り直してッと。)


まず、さすまたの改造に取り掛かる。このままでは、屋内で振り回すには長すぎる。それに殺傷力もない。


なので、さすまたの先のY字の部分をを一生懸命削って適度な長さにし、その先に鋭利なものを付ければ、槍の完成である。


小一時間ほど削り続けてようやく適度な長さにカットできた。


やはりこういう改造は漢心を擽りますね。はい。


次に槍の先を作る。これは技術室の中で最も長い、長さ88.9mmのものを置いてあった中で状態の良い物をいくつかチョイスして纏めて熱し、円錐状の塊にしてから成形する。


これまた一時間くらいかかったが、何とか形になる。


そして溶接と木材やら釘やらで、さすまたの先端に槍先を固定する。上からボンドをぶっかけて完成である。


ボンドが乾くまで待つことにした。ここはかなり安全なようで、廊下にも2,3匹が徘徊してるだけだ。


この学校にどっかでパニックになって叫んでるやつらの声が聞こえるから、きっといい囮になってくれているのだろう。


少なくとも、あいつ等が死ぬまではここは安全だ。テストもこの辺りでしたいから、しばらくここに留まることにする。


気付けば、14時に差し掛かっている。少し遅いが昼食をとることにする。


お弁当を広げると、男物の弁当箱には、ごく普通のお弁当の具が詰まっていた。


「うまそ~!いっただっきま~す。」


といい、少し味の濃い唐揚げを頬張った。













30分ほどたって全部食べ終わると、かなりボンドが固まってきていた。恐るべし速乾タイプ。


その槍を持ってそっと鍵を開け戸を開ける。そして廊下にいるゾンビを一匹だけ引き付けられるように服を擦って小さな音を出す。


すると、一番近くにいたゾンビがこっちによろよろと歩いてきた。


悠斗は他のゾンビに気付かれないように音を立てないように槍を構え、こちらを食べようと試みるその口に突き刺した。


グジュッ。


うげっ。嫌な音。そして嫌な感触。


しかし威力は確かなようで、ゾンビは少し痙攣して動かなくなった。


(さて、槍を回収するか。)


と思い、槍を抜こうとする。


グッ。グッ。


あれ?抜けない。


槍の先があまり滑らかではなかったから、きっと槍の先のどこかがつっかえたのだろう。


(これは改良の余地ありだな。)


と考えながら隣にあった箒で頭を押さえ引き抜く。が。


カン。


槍の後ろが壁に当たり、音が鳴ってしまった。


(やばっ!!!)


しかし今更どうしようもない。残りのゾンビがこっちに来る。


それに、今の音に気付いたゾンビがここに集まってくるだろう。


槍だけでは1匹やってる間に他のゾンビが群がってくるだろう。


バールは?いや、俺はそんなに持久力はないから、殴りつけるなら増田先生の時みたいに1匹相手の時しか体力が持たないだろう。


(まずいな…。どうするか…?)


焦っていると、突然乾いた音がした。


パパパパパパパパン。パン。パン。


(銃声!?自衛隊か?それとも警察か?)


ゾンビが一斉に音のした方に向き、そのまま歩いて去っていった。


(なんにせよ助かった。だが、あのままでは…。)


銃声から察するに、戦力的には少人数だろう。


2~3人だと思ってもいいと思う。


その人数であれだけ派手に銃をぶっ放せば、たちまちゾンビどもが殺到するはずだ。


いくら訓練されているとはいえ、この高校の生徒数からいると思われる生き残りを引いた約400匹のゾンビを殲滅などできはしないだろう。


(まぁ、あいつらの銃声が聞こえなくなって余裕があったら見に行くか。銃が拾えるかもしれないし。)


もう一度技術室に戻り、静かに鍵をかける。







「まずは槍の改良だな。」


鑢で出っ張りを削る。


また一時間くらいかかって、削り終える。


さらに、念のため予備の槍先も2つ作る。


暫くして、作り終わったころには、もう18時を回っていた。


やることがないので、もう少し物色する。


すると、手回し充電式のライトがあった。これは使える。


少しホクホクしながら、もう少し漁る。


(今日はここに泊まるとするか。バリケードを作れば大丈夫だろう。)


そう思いながら、技術室を物色し続けたのだった………。

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