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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
百折不撓
49/64

交錯

少し展開が急です。

その日の深夜。


いや、もう翌日の明朝というべきだろう。


麗香は新生大日本帝国の入り口を過ぎようとしていた。


車が急停止し、目を覚ます。


(ここは、どこだろう?)


手足を拘束されているため、詳しい様子は分からないが、兵士が数名見張りについているようだった。


それぞれが銃を携帯している。


(一体、どれほどの国力を持っているのかな?)


恐らく、東北の自衛隊基地に匹敵するほどなのだろう。


いや、それ以上かもしれない。


運転手が見張りの兵士と少し雑談をすると、車が再び動き出した。


それからまた数分ほど進むと、車が止まり、麗香に男が近づいてきた。


「到着したぞ。」


男は乱暴に麗香の手をつかみ、歩き出した。


抵抗しようと思ったが、他数名の兵士が銃を構えているためにできなかった。
































その数時間後。


東北自衛隊基地作戦司令室。


国防大臣が、マイクに向かって口を開く。


このマイクはこの基地や、他の基地にもつながっている。


「諸君!いよいよだ。この一戦で我々の日本の運命が変わる。ここが正念場だ。奴らは強い日本を作るという大義名分を元に、この日本を!我々の美しい国を軍事国家に変えるつもりなのだ!そんなことが許せるのか!?否!我々は日本を、日本の誇りを賭けて!戦う義務があるのだ!歴史を誤った方向に進めてはならないのだ!」


その演説に歓声が上がる。


「そうだ!その通りだ!」


管制官が次々に立ち上がり、右手を上げる。


恐らく、他の基地の人々も同じように手を挙げ、咆哮を上げているだろう。


「航空隊全機発進せよ!第一、第二、第三船隊!所定の位置まで移動!陸戦隊は各基地より発進せよ!敵は奴らだけではない!歩く亡者どもとも戦うことになるだろう!だが、諸君!これは我々の愛する日本の運命をかけた一戦なのだ!臆するな!この戦いで真の平和を手に入れるのだ!過ちの連鎖はここで断ち切るのだ!負の運命の鎖を………我々の手でッ!」


「航空隊発進せよ。繰り返す。航空隊全機発進せよ。」


『あいつらにミサイルのプレゼントをくれてやろうぜ!発進する!』


次々に飛び立つ飛行機。


錨を上げ、海原を切り裂いて進む戦艦。


そして重厚な音を、咆哮を立てながら猛進する陸戦隊。


戦いの火蓋が切って落とされたのだ。




















新生大日本帝国の基地が見える丘。


そこに、悠斗と和久井がいた。


「そろそろ始まる筈だ。準備しろ、悠斗。」


「はい。」


準備をしながら考える。


何故この人は東北の基地が攻撃することを知っていたのだろうか。


勿論、基地の人間だと言われたらおかしくはない。


だが、もし基地の人間だったとしたのなら、どうしてたった一人で行動していたのだろう。


もしかしたら、元は大勢で行動していて、その途中に仲間が死んでしまったのかもしれない。


しかし、ジープにはあまり食料がなかった。


食料はできる限り持っておくのは鉄則のはず。


初めは大勢で行動していたと考えても、少なすぎる。


まさに、一人が生活していく分の食料しかなかった。


(食料を持って行けない理由があったのか……?だとしたら……。)


和久井の方をちらりと見る。


(この人は一体、何者なんだろう。)


疑念が、膨らむ。





















数十分後。


新生大日本帝国通信指令室。


「レーダーに反応あり!航空機です!……これは!」


「どうした!」


「50、100……100機以上の航空機が、この基地に接近しています!」


「ええい、何故気づかなかったのだ!急いで兵を戦闘配置につかせろ!奴らが先に攻めてきたのだ!岸沢閣下にお伝えしろ!急げ!」


「は、はいぃ!」


通信機に向かって男が喋りだす。


「緊急警報発令!敵機接近!迎撃しろ!一機残らず叩き落とせ!」


(スパイは何をやっていたのだ……。優秀なのを三人向かわせたというのに、連絡がない。ばれたのか……?それとも……。)


航空機だけということはあるまい。


恐らく、陸からも海からも攻めてくるだろう。


「陸軍と海軍にも連絡を取れ!迎撃するのだ!」


急に慌ただしくなる部屋。


それは戦いを前にして気持ちが高ぶっているからだろうか。


交錯する思い。


それは一つの糸となり繋がっていく。

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