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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
百折不撓
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猛攻

連載再開です。

ちらほらと雪が降っている。


少し開けた場所には、会議と銘打っておきながらも、任務の成功を祝って酒を飲んでいる男たち。


そしてそれを見る二人の男。


一人は少し高い位置から。


もう一人は男たちの背後から。


背後に回った男は呟く。


「最後の晩餐だ。ゆっくり味わえ。」


と━━━━━━━━━━━━━。




































「んじゃ、始めますかぁ!」


このジープの後部座席にはM2の弾薬の入った箱が所狭しと並んでいる。


耳栓を詰めて、箱を開ける。


そこから給弾ベルトを取り出すと、M2にセットする。


M2を両手で保持し、照準を密集している敵に向ける。


引き金に指を添え、その指にゆっくりと力を込めていく。


スゥーー………ハァーー………。


自分の呼吸音がどこか遠くから聞こえてくるような感覚。


神経が張り詰め、体が固まったかのような緊張感。


それが不安やプレッシャーであり、どこか心地いい。


「行くぜッ!」


引き金を引き切ると、M2から銃弾がまるで雨のように打ち出される。


敵の背中を打ち抜く。


肩と腕に当たる。


足に、腹に当たる。


ゆっくりとM2を右に動かしていく。


「な、なんだ!?敵かっグボォエ!」


顔面に命中。


「ヒッ!ひぇぇ……ガァァ!」


首と胸から血飛沫。


キン、キンと空薬莢が落ちる音がする。


「敵だッ!応戦しろ!」


ようやく敵も事態を飲み込めたようだ。


車の陰に隠れる。


だが、既に遅い。


「今だッ!」


敵の後ろに回り込んでいた悠斗も射撃に加わる。


「当たりやがれ!」


9mm拳銃から飛び出した球が男の方に当たる。


「グッ!肩が……後ろから!?」


後ろを振り向く男。


「おぉっと。こっちを忘れんなよッ!」


再びM2が猛然と火を噴き、後ろを向いた男の後頭部から脳漿が飛び散る。


「ビンゴッ!」


これで生きているのは五人。


一人は腕と肩に当たったので、戦闘できる敵のはあと四人といったところか。


M2の弾が切れたので、新しい給弾ベルトを付ける。


ちらほらと降る雪が、M2に積もっては、熱で溶けていく。


「冷やす必要はないってか?」


と、おどけた様子で呟きながら再びM2を構える。


「もういっちょおッ!」


M2がその口から再び死の金属塊を吐き出し始めた。


「隊長ォ!どうしますか!」


「クッ、後退だ!後ろの方が攻撃が薄い!」


「了解!」


そう言って走り出す。


だが。


「うわぁッ!!!」


先行した隊員が倒れた。


否、転んだ。


そして、その頭を悠斗が撃つ。


よく見ると、倒れた隊員の足もとには、釣り糸とおぼしきものが張ってあった。


「えぇい、何と間抜けな!お前たちはここで敵と応戦していろ!私は通信機で本部と連絡を取る。」


這いながら車まで向かう。


「痛ッ……うああああああッ!」


後ろから悲鳴が聞こえるのも構わず、車にたどり着く。


扉を開け、中から通信機を引っ張り出す。


本部に繋がっているかを確認し、通信しようとした瞬間。


ダン。


銃声がして通信機が壊れる。


「動くな。両手を上げろ。」


まだあどけなさが残るような高校生ぐらいの少年が銃を構えている。


(クソッこんなガキに……!)


そう思わざるを得ない。


部下がいた方を向くと、二人とも血を流して倒れている。


「アンタにゃ聞きたいことがあるんでな。洗いざらい話してもらう。」


こうなっては、観念するしかなかった。






















数分後。


縛られた男と、二人の男が話していた。


「何ィッ!?それじゃあ、麗香はもういないのか!?」


「そうだ。もう移送した。」


無駄骨だったか。


音を立てたので、ここにゾンビが寄ってくるだろう。


そうすると、ゾンビの後を追う方法は使えない。


「麗香ちゃんはどこにいるんだ?なぁ、おい。」


和久井が縛られている男の頭をつかみ、前後に揺らす。


「ほ、本部だ!本部にいる!だから揺さぶるのはヤメテェェェェェ!」


悲痛な叫びが聞こえる。


すると、和久井は、こともなげにこういった。


「そっか。んじゃ、悠斗。本部に行くぞ。」


「えぇ!?」


自分達はたった二人。


それなのに本部に乗り込むなど、無謀すぎるのではないか。


その悠斗の思いを悟ったのか、和久井が説明を始める。


「悠斗。明後日は何の日だ?」


「明後日……は……。新生大日本帝国が戦闘を開始する日ですよね。」


「そうだ。だが、なんと東北の方の基地が明日攻撃を開始するんだ。」


「そ、そうなんですか!?」


「あぁ。もちろん、帝国の連中だってその可能性は考慮しているだろうな。だが、その混乱に乗じれば………。」


「行けなくはないってことですね。」


「そういう事!んじゃ、行くぞ。」


ジープはここに置いておくことにした。


男の話によると、ジープは帝国では使用しておらず、疾風なら使用しているそうだからだ。


その方が潜入に都合がいい。


エンジンをかける。


「ま、待ってくれ!置いてかないでくれぇぇぇ~!」


男が懇願するが、無視した。


「そう固い事いうなって!地獄でお仲間さんが待ってるぜェ~?」


疾風は走り出す。


「ウゥゥ……ァ…アァァアア……。」


遠くからヨタヨタとゾンビが歩いてくるのが見えるが、手足を縛られているため、どうすることもできない。


芋虫のように無様に地を這うのみ。


「あ……あ……。」


ゾンビが近づいてくる。


その口が開き、自分に咬みつこうとしてくる。


「あ、あいつらを…あそこで!あの倉庫で殺しておくべきだったぁッ!いや、こんな……。こんな任務を受けなければ……。受けさえ……しなければぁぁぁぁッ!!!」


「アアァァ……オォォオオオォ……。」


ブシュッ


……………。








次回もお楽しみに。

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