颯爽
少し短めです。
悠斗が麗香を追い始めた頃。
その近くの公道を一台のジープが走っていた。
そして、そのジープの運転手が倉庫の方を見る。
「うん?あっちの方にゾンビが集まってるな…。誰かいるのか?どうするか………?」
彼は自分の胸ポケットから写真を取り出す。
そこには、彼と女性が微笑んでいた。
「出来れば関わりたくないけど…。お前がそう言うなら向かってみるか。」
そしてハンドルを倉庫に向けてきった。
「ええい、ゾンビが多いな…。まだエンジンはかからないのか!?」
「もう少しだ!後ちょっと踏ん張ってくれ!」
倉庫に残った大関達は危機に瀕していた。
これまでの戦いの傷が祟ったのか、二号車と五号車のエンジンがかからないのだ。
荷物を他の車に移したほうがよかったと思ったが、山本がすぐ直ると言ったので此の場で応急処置を待つことにしたのだが、どうやら判断ミスだったようだ。
ゾンビが炎から這い出てきたのだ。
今は数が少ないので鉄パイプなどで叩き潰せているのだが、数が増えれば銃を使わないといけなくなる。
正直な話、銃はあまり使いたくない。
何時補給が出来るかも分からないからだ。
また、銃声でゾンビを集めることにもなってしまう。
しかし、今から荷物を運んでいたのでは間に合わないだろう。
大関が焦り始めたその時、炎が上がっている壁の一部が、ゾンビの荷重と炎により、轟音を立てて倒れた。
「不味いな……。」
このままでは建物が倒壊する恐れもあるし、新しく開いた穴からゾンビが押し寄せてくる。
案の定、ゾンビが開いた穴からなだれ込んでくる。
「アァァあぁぁア……ウゥゥぅぅぅ……ェェェエエェェ………。」
想像より数が多い。
これでは銃を使ったところでゾンビを倒し切るのは不可能だろう。
もう無理か。
そう思った時、倉庫の入り口から、一台の車が入ってきた。
ジープだ。
窓には金網がついており、隊や周りは鉄板でガードされている。
前の部分には、除雪車が付けているが付いている。
そして屋根の上にはM2重機関銃が。
例えるなら『要塞』。
その表現が一番ぴったりだ。
そのジープの屋根から一人の青年が出てくる。
少し長めの髪に、整った顔立ち。
カーキ柄の長そでに迷彩色のカーゴパンツ。
そんな出で立ちの青年がM2重機関銃に手を掛け、引き金を引く。
放たれた無数の弾丸が、ゾンビの肉を、骨を、臓器をぐしゃぐしゃにしていく。
一通り射撃を終えると、新しい穴から入ってきたゾンビは動かなくなり、ただの肉片と化した。
大関が青年に駆け寄る。
「すまない、助かった。」
「いえいえ、困ったときはお互い様ってね。」
「不躾で済まないが一つ頼みがある。悠斗という青年を追ってほしい。疾風という車に乗っているんだ。」
「あんたらの仲間なのか?」
「そうだ。」
「じゃあ、なんでまたそんな別行動なんて?」
「麗香という女の子が連れ去られ、その女の子を追っていった。」
「へぇ~。その女の子って可愛いの?」
「??……まぁ、世間一般的にいえば美人だろうな。どうしてだ?」
「いや、何でも……。それじゃあ追いかけてみる。」
「どこに行ったか分かるのか?」
「向かった先はゾンビが教えてくれるさ。そんじゃ。」
青年が運転席に乗り込む。
「待ってくれ。名前を聞かせてもらいたい。」
「俺?俺は和久井 遼だ。」
「ありがとう。本当に感謝している。どうか、悠斗を頼む。」
「解った。任しとけ。あんたらも死ぬなよ。」
そういうと、遼はアクセルを踏み、悠斗が出て行った穴から悠斗の車を追ってフラフラと歩くゾンビを道標に出発していった。
大関は遼を敬礼で見送ると、再びゾンビの駆除に戻ったのであった………。




