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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
阿鼻叫喚
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初殺

「…増田先生?無事…じゃないですよね…?」


増田先生はゆっくりとした足取りでこっちに歩いてくる。


「……話し合いで解決…喋れませんよね…?」


見た感じ奴らに違いない。が、信じたくはなかった。


人がゾンビになるなんて。何かのドッキリだと思いたかった。


しかし。


口元が大きく欠損しており、頭蓋骨の一部が見えている。


内臓も丸見えで腸を引きずっており、服もほとんど食い破られている。


生きていて、さらに女であればわぁお!セクシ~。などとも言えたのだろうが、どう見ても死んでいる。


やがて5m程の距離に近づくと、呻いた。


「ァぁぁぁぁぁ~…ぅぅウうう」


やっぱりすでに生きてはいない。


改めて確認したところで、衝撃の事実に気が付く。


武器が無い。


これは本格的にまずいと思い、辺りを見回す。


学生鞄?これは無理だ。威力がない。


椅子?これはプラスチックで出来ていて壊れ易い。


…穴あけパンチ!これならいけるかも。


穴あけパンチを逆さにし、レバーに指を入れる。


人差し指、中指、薬指しか入らないため、親指と小指はその横に添えるようにして持つ。


「即席メリケンサック完成っと。」


鉄製の古めかしい感じのものなので強度は問題なかろう。


気が付くと、増田先生は手を伸ばせば届くような距離にまで来ている。


(やるしかないんだ…。やるしか!!!)


まず足元を払って増田先生を床に倒す。


その体の上に跨って、馬乗りになる。


そして。


「ッぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」


穴あけパンチで顔面を殴打する。顔を狙ったのは、噛まれると感染すると知っていたので歯ごと口をつぶしてしまおうと思ったからだ。


(潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す潰す!!!)


ただそれだけを考えてひたすら顔面を殴り続けた………。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇












暫くすると、増田先生はピクリとも動かなくなった。


(殺してしまった…。人を…。)


と、その場に崩れ落ちそうになるが何とか踏みとどまる。


(あれは人じゃなかった!人だったとしても正当防衛だ!)


と自分に言い聞かせ、振り返る。


こんな時に人間らしい感情は要らない。


(あれ?麗香は?)


さっきまでそこに座っていたはずの麗香がいないのだ。


きっとあまり恐ろしさの我を忘れて逃げ出してしまったのだろう。夢中で気が付かなかった。


(まぁ、自分の命を危険に晒してまで助けるつもりはないし、いいだろう。)


と、思い直した。余裕があれば助けるとしよう。


「まずは武器だな。」


素手とリーチが変わらない穴あけパンチでは危険すぎる。


できれば銃が欲しいが、贅沢は言えない。


「そういえばこの学校、弓道部あったな…。」


悠斗は吹奏楽部のためあまり馴染はないが、多少仲の良かった友達に誘われた覚えがある。


しかし、この学校の弓道場はこの教室とちょうど真反対側である。だったら普通に逃げたほうが早いだろう。


「ま、とりあえずおいおい考えますかね~。」


ゾンビが発生し、増田先生を殺しといろいろあったので、神経が図太くなったのだろう。趣味でゾンビ物の映画を見ていたのも奏功したのかもしれない。


こういうとき必要なのは適度な物資と体力、そして精神力である。


考えた末、とりあえずクラスメートの荷物を漁ることにした。









(これは欲しいよな~…。あっこれもいいな。いやいやこれも…。)


と十分ほど鞄を漁った末、以下の荷物を持ち運ぶことにした。


携帯電話×15


フェイスタオル×5


弁当×5


水筒(お茶、スポーツドリンク)×10


ノート×1


各種文房具の入った筆箱×1


穴あけパンチ×1


学生服上下×2


防犯ブザー(ライト付き)×3


である。







全部詰め込むと、カバンがパンパンになっている。そしてかなり重い。


弁当や水筒が重いのだ。


置いて行こうとも思ったが、やはりセオリー通りであれば大事だろう。


諦めて持つことにする。


(とにかく武器だな。どこで調達しようかね?)




(………そうだ!技術室!)


技術室は北館の1階。この教室は北館の2階なので、階段を下りたすぐ下である。


そこならバールやハンマー等の鈍器が手に入るだろうし、ドライバーなどの工具や釘などの消耗品が入るかもしれない。


そっと廊下の様子を窺うと、うげっ。いっぱいいる。


数えると1,2,3………。7匹いる。


麗香はいないようだ。少しほっとした。べ、別にうれしいとかじゃないんだから!!!


(馬鹿やってる場合じゃねぇっつの!………どうするかな~。この数を一気にやるのは無理があるな。何かで引き付けられれば…。)


いや、まてよ。映画と一緒な感じであいつらは目が白濁している。


つまり、目は見えない。なのにこっちに気付いたってことは鼻か耳、もしくは両方が鋭敏になっていると考えるべきだ。


(………実験開始といきますか!)


クラスメイトの携帯とメアドを交換する。


そしてその携帯を廊下の奥の方に床を滑るように投げる。


音量は一番小さくし、有名な女性歌手の歌にセットしておく。


小さくしたのは、もし耳が鋭かったときに集まりすぎるのを防ぐためだ。


そしてメールを送信する。


小さな音楽が微かに聞こえる。





すると、ゾンビが携帯に近づいていったではないか。


やはり耳は良いようだ。


いい塩梅に廊下にいた7匹が携帯に群がる。


その間に階段まで靴下になって移動し、ゆっくり降りる。


(階段下には……良かった。一匹だけだ。)


しかもこちらに気付いていない。


なので、後ろから忍び寄り穴あけパンチで頭をかち割る。


やべぇ。某諜報機関に勤めるエージェントみたいじゃん。テンション上がる!じゃなくて。







技術室前にはゾンビがいなかった。授業があればいつも金槌の音が聞こえるが、今日は聞こえていなかった。


授業がなかったから、ゾンビとなる人もおらず、ゾンビがいないのだろう。


そう考えながら技術室の扉を開いた………。




















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