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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
死中求活
36/64

酒乱

今回はギャグ回です。

その夜。


物資保管庫にそっと忍び寄る影があった。


その黒い影は、物資保管庫を開けると、中から何かの箱を持ち出した。


そして物資保管庫の扉を閉めると、何事もなかったかのように箱を持って去っていった。





















「で、どうしてこうなったんだ?」


悠斗は困惑していた。


なぜなら、自分の目の前には麗香と伊吹と水咲、そして宮本が立ったいたからだ。


唯いるだけなら見舞いに来てくれたと思うかもしれない。


だが、それぞれの手にはスチールで出来た筒。


所謂缶が握られていた。


さらに、その缶もただの缶ではない。


その缶の側面には『BEER』の文字が。


「いや~。無事に帰って来れたことを祝って乾杯しようと、ね?」


伊吹が頭をかく。


「まだ未成年だろ!?それにこのビール、一体どこから持ってきたんだよ!?まさか保管庫から盗ってきたなんて言わないだろうな!?」


「…………テヘッ!」


「うわぁぁぁぁ!やっぱりそうだったァァァァッ!お前、もし大関さんが来たら!」


「細かいことは気にしない気にしない!では!」


悠斗も缶を握らされる。


「かんぱ~~~~い!!!」


その場にいる全員が缶を開け、グイッと酒をあおる。


口の中に、独特の苦い味が広がる。


「うえっ!苦ッ!」


思わず零しそうになる。


が、それを何とか口の中に収める。


「ん?苦いかな?僕は美味しいと思うけど。」


対する宮本は涼しい顔で飲み干してしまった。


伊吹もかなりのスピードで飲んでいる。


麗香と水咲はかなりゆっくりだ。


「ささ、つまみもあるから食べて食べて!」


悠斗のベッドの横にあるサイドテーブルにスルメや、チーズ蒲鉾などが並べられ、各々がそれを摘まむ。


悠斗も最初は背徳感や、大関たちに見つからないかという不安ばかりだったが、だんだん楽しくなってきた。


そして、自分のもっている缶を一気に飲み干した。





























さらに夜も更けて。


悠斗達の医務室は、唯の酔っぱらいの巣窟と化していた。


悠斗は元来、お酒に強かったのか、正常なのだが、ほかの面々は最早人格が破綻してしまっているほどだ。


「ねぇ~~。悠斗くぅ~~ん。もっと飲もぉ~よぉ~。」


缶を左右に振りながら悠斗に迫ってくるのは、他の誰でもなく、麗香である。


「え、遠慮しとくよ………ハハハ……。」


「私の酒が飲めないって言うのぉ~~~?アハハ~!ひっどぉ~~~~い!早く飲んでよぉ~~~!」


「じ、じゃあイタダキマス…。」


こうなっては、最早たちの悪い酔っぱらいである。


(宮本なんて、水咲に缶を突っ込まれてるし。……あっ、倒れた。)


「宮本、大丈夫か?」


近くに寄ろうとする。


が。


「悠斗………。」


「え…?うわっ!」


急に伊吹がしなだれかかってくる。


「あ、あの~。伊吹さん?」


「ん~?」


駄目だ。


完全に目が座ってる。


「あのですね、その、少し近い気が…。」


すると、伊吹は自分の体で、悠斗の腕を抱きしめる。


「いいじゃん…。別に…。」


「いや、その、なんかいろいろ腕に当たってるからやめて!!!」


「もぅ…。バカ…。当ててんのよ。」


「へ?」


「だって私は……私だって…!」


「まぁまぁ二人とも!そんな顔してないでもっと飲みましょ~よ~!」


悠斗と伊吹が顔を上げると、そこには両手に缶を持った水咲が立っていた。


「え~い!」


そして悠斗と伊吹は滝のように流れ出るビールを頭から被る。


「アハハハ!二人ともビショビショです~!」


二人はずぶぬれになった。


だが、ここで悠斗に一つ問題が発生する。


(うわぁぁぁぁぁ!!!感触が!)


さっきまであたっていた部分の服がぬれることにより服と肌がくっついて、より肌に近い感覚になったのだ!


(落ち着くんだ俺!素数を数えろ!)


落ち着こうと努力するが。


「ねぇ……。悠斗……。」


伊吹が顔を近づけてくる。


その顔が妙に艶っぽい。


何処か扇情的である。


「な、なんでしょう!」


「悠斗ってさ…。かっこよくて強くってさ…。決める時には決めるけど、色々鈍感でさ……。ホント、ずるいよ……。私は…悠斗のことを………。」


「お前たち!!!何をしている!!!」


「あ。」


寝ている宮本を除く全員が振り返ると、そこにいたのは大関だった。


本来なら全員が竦んでいただろう。


だが、今の状況における大関の立場は、ライオンどころか、ティラノサウルスのいる檻に放り込まれたウサギのようなものだ。


「こんなところで何をしているのかと聞いている!」


「い、いや、これは……。」


「アッハハ~~!大関さんだ~~。」


そこに飛び出してきたのは水咲。


そして、その大関の口に缶を突っ込む。


「ムグッ!?…ック……プハッ!」


「うわ~凄いですね!全部飲んじゃいました~~~!」


「ゲホッ!ゴホッ!」


「もう1かーい!」


噎せている大関に追い打ちをかけるかのように麗香が大関に酒を飲ませた。


そして。


時刻は草木も眠る丑三つ時。


世界中のほとんどが寝静まっている。


だが、蠢く死者たちとこの基地内だけは眠っていなかった。


大関はというと。


「ウッ……私は…グスッ…この国を守りたくて……ヒック国民の未来を守りたくて……自衛隊に入ったのにぃぃ!」


完全に出来上がっていた。


ていうか泣き上戸だったんだ。


そして、それを聞いて目を潤ませながら、水咲がお酌をしている。


宮本はぐっすり眠っていて、伊吹と麗香は、俺を挟んで飲んでいる。


ああ、もう。


本当に。


「どうしてこうなった………。」


溜息しか出ない悠斗であった。






次回もお楽しみに。

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