兵器
少し短いかもです。
翌朝。
「んじゃ、出発するぞ。」
「あいあいさ~。」
バイクのエンジンをかけて、悠斗と伊吹は移動を開始した。
幸い、家の周りにゾンビはいないようだ。
「今日中に駐屯地に辿り着こうぜ。」
「あっ、でもさ。」
「ん?」
伊吹が地図を見せてくる。
「ここに病院あるじゃん?ここで薬とか調達したほうが後々役立つと思うんだけど?」
「う~ん…。確かにそうだな。」
「でしょでしょ?行ってみようよ!」
「でも危険だぞ?噛まれた人がたくさん搬送されただろうしな。」
「細かいことは気にしない!男だろ!」
背中をバシバシ叩かれる。
「俺は時々お前が女に見えなくなるよ…。あっ!」
慌てて口を塞ぐがもう遅い。
「誰が女に見えないって~?」
口は笑っているが目は笑っていない。
「ちょ、今運転中だからマジでやめっギャァァァァァ!」
悠斗の絶叫で、町にいるゾンビが蠢きだしたのは言うまでもない。
その頃。
「悠斗たちは今日あたり到着するか…。」
大関たちは昨日のうちに駐屯地に無事辿り着いていた。
この駐屯地は、既に放棄されてはいるものの、バリケードやフェンスは健在であり、装備も、ここに居たであろう隊員が持っていけなかったものは残っていた。
この駐屯地にあった報告書や記録を見て村下が狂喜したのは言うまでもない。
そして今現在、大関は大きな格納庫の前に立っていた。
「中に何が入っているかは開けてからのお楽しみってか…?」
バールで扉をこじ開けようと試みる。
「んっ!クソッ…なかなか頑固だ…なっ!フン!」
扉が開くまではもう少し時間がかかりそうだ。
「大関さ~ん。」
駐屯地の建物の方から麗香が走ってくる。
「麗香か。どうした?」
「いえ、お茶でもどうかな?と思いまして。」
そういうと、微笑みながら水筒を自身の顔の横に持っていき、水筒を振った。
チャプチャプと水音が鳴る。
「なら、頂くとするか。」
地面に座って水筒を受け取り、お茶を啜る。
「何でこの基地って誰も居なかったんですかね?」
「食料が無かったからな。食料を確保するためにどこかに出かけたか、それとも、持てるだけの食料を持って東北の自衛隊基地に行ったのか。まぁ、そんなところだろう。」
「悠斗君と伊吹さん、大丈夫でしょうか?」
「あぁ、きっとな。別行動しても簡単に死ぬような奴らじゃないさ。」
大関が煙草を咥え、ライターで火をつける。
少しの間紫煙を燻らせると、再びバールで扉をこじ開け始めた。
「私も手伝いますか?」
「あぁ、そうだな。なら、掛け声と一緒にバールでこじ開けるぞ。」
「わかりました。」
「いくぞ…。いっせーの…せッ!」
「えいッ!」
バキンと音がして扉が開く。
「イテテ……。さて中身は何かな…?」
開いた扉から中を窺う。
「!…なんでこれがこんなところに……?」
大関は目を見開いた。
「えっ?な…なんなんですかコレ!?」
麗香も中を窺い、同じように目を見開く。
そう思うのも無理はない。
なぜなら、そこに鎮座していた物は。
「自衛隊の自走砲…。通称ロングノーズだ。こんなところにまで配備されていたとはな。」
近くに置いてある木箱には、砲弾が整然と並べられている。
「撃てるんですか?コレ。」
「あぁ、恐らくな。私も一度訓練の時に見た事しかないが、撃てんことはないだろう。」
大関はそう言うと、オリーブドラブに塗装された車体をそっと撫でた……。
その頃。
病院の前に到着した悠斗と伊吹。
「とうちゃ~っく!」
「ワーイ。ヤッタヤッタ。アハハ。アハハ……。」
もう誰かお分かりだと思うが、テンションの高いほうが伊吹。
そして廃人同然の方が悠斗である。
なぜこうなったのかは………。
ご想像におまかせ致します。
「取り敢えず、物音を立てないようにいくぞ。」
「は~い。」
危険地帯に向かうため、気を引き締め直す。
ガラス張りの自動ドアを手動で開けて中に入る。
この病院は県内有数の大病院だ。
もちろん目に見える位置に何体かゾンビがいる。
(いちいち相手をしてられない。可能な限りの戦闘を避けて、衛生品の置いてあるところに行くぞ。)
(了解。)
右の方の通路を歩き、案内板を見る。
(保管庫は2階の突き当りだ。)
(静かに行こうね。)
慎重に進み、備品保管庫に到達する。
だがこのとき二人は気づかなかった。
備品保管庫の向かい側の部屋で起こっていた惨状を…。
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