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死者の蠢く世界で  作者: 三木 靖也
死中求活
29/64

風呂

高校に合格しました。

これからも頑張っていきますので応援お願いいたします。

カラスの群れが点のように見えるまでバイクを走らせ続けた。


そのバイクには一組の男女。


だが、こんな状況にあっても、二人の顔は愉悦一色だった。


その顔に潜むものは狂気か自棄か。


それとも━━━━━━












「何とか振り切ったね!」


「あぁ、油断はできないが、たぶん大丈夫だ。早く駐屯地へ向かわないと。」


しかし、悠斗たちが逃げてきた方向は駐屯地とは逆方向。


裏口から脱出するのは仕方のない状況だったとはいえ、かなり面倒なことになった。


(『残念!振出しに戻る!』って感じだな。これはもう一泊位しないと駄目か?)


「多分一日で着くのは無理だ。どこかで止まれる場所を探さないとな。それに…。」


「それに?」


「ガソリンがあんまり無い。」


「ゲッ!大問題じゃんソレ!」


「とにかく、まずは今日の宿とガソリンスタンドを見つけないとな。」


「そうするしかないね~。」


















暫くバイクを走らせると、ゴリラのCMで御馴染みのガソリンスタンドを見つけた。


セルフサービスらしい。


「ガソリンって確かかなりの量が溜めてあるんだよね?」


バイクの給油口の蓋をあけながら雨音が訪ねる。


「ん?あぁ、確かな。それより、金持ってる?」


「うんにゃ。持ってないよ。」


「だよなぁ…。」


「今じゃ尻を拭く紙にもなr」


「言わせねーよ!……レジ荒らしてくるから待っててくれ。」


「えぇ~!私が荒らしたい!」


「そういう問題じゃねぇだろ!俺が行ってくるから、待っててくれ。」


「あいあいさ~。」


建物内に入ると、太陽の光が遮られ、かなり見づらい。


仕方がないので、学校で拾ったライトで辺りを照らす。


「あったあった…。」


レジを見つけた。


既に何者かが荒らした形跡があり、金を奪われてはいるが、バイクに給油できる程度の金はある。


レジから金を取り出す。


その時に、うっかり100円玉を落としてしまった。


チャリン。


という、御馴染みの音が鳴る。


「ァァァァ…ぅゥゥがぁアア」


すると、奥の方からよろよろと一体のゾンビが歩いてきた。


「…起こしちゃったかな?」


バールを持って近づく。


ゾンビが手を出して、掴みかかろうとするが、その前に悠斗のバールが頭にめり込んでいた。


「悪いけど、もう少しおねんねしててくれよな。」


そう言い残して建物を出る。


レジから持ってきた金を入れて、給油を始める。


雨音は地図を広げている。


どうやら、駐屯地への道を探っているらしい。


影ながら努力してくれているのは嬉しい。


悠斗はそっと近づき、礼を言った。


「わざわざ悪ィな。サンキュー。」


「ん?これくらいどうって事無いし、気にせんでもかめへん、かめへん。」


「何で訛った?」


「なんとなく。」


「あっそう…。で、道は?」


地図を広げる。


「この辺はまだカラスがいるかもしれないから、ずっと右に迂回していった方がいいと思う。」


指を差しながら説明する。


「解った。それじゃあそのルートで行くか。」


「イェ~イ!出発しんこー!」


キーを回し、エンジンをかける。


「しっかり掴まってろよ!」


「解ってる!」


バイクならではのエンジン音を鳴らしながら走り出した。















休憩をはさみながら、そしてゾンビを躱しながら走り続けた。


暫くすると、伊吹が口を開いた。


「ねぇ、悠斗。あの家なんかいいんじゃない?」


伊吹が指差したところにあったのは、バリケードのある家だった。


「今日泊る所ってことか?」


「そういうこと。」


「じゃあ、あそこの家にするか。」


バイクを止め、バリケードを乗り越える。


「誰も居ないよね?」


「あぁ、多分な。若しくは……。」


「……ゾンビになってる。」


「ま、行ってみなけりゃわからんだろ。」


扉に手をかける。


引き戸になっている扉に力を込めると、何の抵抗もなく開いた。


「取り敢えず、中を哨戒するぞ。」


「りょーかーい!」


中に入ると、何の物音もしない空間が広がっていた。


1階や2階、さらにトイレや押し入れまでくまなく哨戒したが、ゾンビはいなかった。


玄関の扉に鍵をかける。


「今日はここに泊まれそうだ。」


「あの、さ。悠斗。」


「ん?」


「さっき風呂有ったじゃん?入れないかな~なんて。」


「そもそも水道止まってるだろ。ゾンビも寄ってくるかもしれないし。」


「水が出たら風呂に入らせてよ!お願い!四分の一生のお願い!」


「一生じゃないのかよ!…まぁ、水は出ないだろうし、もし水が出たらいいぞ。」


「マジで!?やった!」


伊吹が嬉しそうに浴場に走っていく。


そして。


「悠斗!水出たよ!お湯まで出る!」


「ウソ……だろ?」


水が出た。







後になった解ったことだが、どうやらこの家は自家発電で水を温める装置がついているらしい。


おまけにこの家の地下には貯水槽があった。


こうして。


「あったけぇ~。」


悠斗は今湯船につかっている。


い、伊吹と混浴なんかじゃないんだからっ!


世界が終わってからは、トレスでシャワーを一回浴びたっきりだったため、体は正直臭かったし、汚かった。


冬場だったからよかったが、夏だったら確実に鼻が死んでいた。


現に悠斗が入っている湯船の水は、身体の垢やら何やらで濁り始めていた。


お湯は一度容れ直さないといけないだろう。


ボディソープで体を洗うと、益々スッキリした。


生まれ変わったような。


そんな表現が似合うくらい清潔になった。


風呂から上がり、身体をこの家にあったタオルで拭く。


そしてジャージを着る。


このジャージもこの家に置いてあったものだ。


少しサイズは大きいが、無いよりはマシだ。


鏡の前に立って、自分の髪を触る。


(長くなったな…。それに髭だって生えてきたし。)


悠斗は髪以外はもともと薄毛の方に入るが、普段はあるかないかわからないほどの毛も、今ではその存在を主張し始めている。


髪は結構長くなってきている。


「雨音~。上がったぞ~。」


「今行くー!」


悠斗は浴場を後にした。


















数十分後。


悠斗がソファで座っていると、風呂から上がった伊吹が来た。


「!!!」


悠斗は驚いた…。


何故なら伊吹の服装は。


「Tシャツ…だと?」


所謂裸Tシャツだったのだから。


(おれは今雨音の萌え要素をほんのちょっぴりだが体験した。


い…いや…。体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……。


あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!


「おれは 雨音が風呂から上がったと

思ったら いつのまにか萌えていた」


な…。何を言っているのかわからねーと思うが 


おれも何をされたのかわからなかった…。


頭がどうにかなりそうだった…綺麗だとか超美しいだとか


そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。


もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。)


「悠斗~!大丈夫?」


「はっはい!大丈夫であります!」


「?まぁいいや。髪切ってくれない?悠斗のも切ってあげるからさ。」


「か、髪ィ!?」


というわけで。


「悠斗!早く早く~!」


「かしこまりました……。」


今の状況を簡単に説明すると、椅子に座った伊吹の後ろに悠斗がハサミを持って立っているという感じである。


「どれくらいの長さがいいんだ?」


「どうせ結ぶから肩くらいの長さでお願い。」


「でも、こんなに伸びてる毛を切るなんて勿体無いよな…。」


伊吹はいつも後ろで一つ結びをしている。


俗に謂うポニーテールのようなものだ。


髪留めを取ると、腰までの長さになる。


それを肩まで切ろうというのだから悠斗が戸惑うのも無理はないだろう。


「んじゃ、切るぞ。」


「ん。」


もちろん悠斗は他人の髪なども切ったこともないので、何の技術もなく、唯切るだけだった。


しかし。


(やばいってこれは!風呂上りでいい香りがするし服が若干透けて…って違う!集中集中!!!)


極度に混乱している悠斗では、その混乱を出さずにするのが精いっぱいだった…。


















少し更新が遅れました。

もう少し早く投稿できるように心がけます。

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