救出
鉄砲店編です。
サクサク行きます。
腹ごしらえ(拷問)を終えた一行は一路鉄砲店を目指していた。
「…なんか、すっげー腹の調子悪ィんだけど。」
「仕方ない。任務にはそれなりの犠牲が伴うものだ。」
「戦いの後はいつも虚しいってヤツですか…。」
「そこの通りを進むと右側にあるはずだ。」
暫く走ると、『マエダ鉄砲店』と書かれた店が見えた。
「ここですね。」
「よし、車を止めろ。山本は車で周囲警戒。残りは私とともに建物内の安全確保だ。」
「了解。」
悠斗はレミントン。宮本は警察署で手に入れたニューナンブ。大関はAR-15を持って中に入った。
マエダ鉄砲店は防犯用のシャッターが閉められていた。
どこも破られてはいないようなので、武器は豊富にあるだろう。もしかしたら、生存者もいるかもしれない。
最初に小声で呼びかける。
「おい、誰かいないか?救助に来た。いたら返事をしてくれ。」
反応はない。
「返事がないようなら、シャッターを開けて入らせてもらうぞ。」
反応はない。
「どうやら、誰も居ないようだな。シャッターを開けよう。」
そう言うと、大関がピッキングツールを取り出す。
暫く鍵穴をゴソゴソやると、ガチッと音がして、シャッターの鍵が開いた。
「はぁ~。上手いもんですね。」
悠斗も少しはピッキングができるが、職員室の扉で十分はかかっていた。
こんなシャッターを少しゴソゴソやるためにはかなりの腕と経験が必要になる。
「自衛隊でもこういう訓練やるんですね!」
と宮本が興奮気味に言う。
「…ただの趣味だ。行くぞ。」
(訓練じゃなかったんだ…。)
シャッターを開けて目に飛び込んできた光景。それは。
「人が倒れてる!」
中に人。それも女の子が倒れていたのだ。
「大丈夫か!?」
大関さんが抱き起す。
「ぁ…ぅ…あなた、は…?」
見た限りでは中学生くらいの子が苦しげに問う。
「私は自衛隊の大関陸男曹長だ。君を助けに来た。」
「わた、し…助かるん、ですか…?」
「あぁ。悠斗。この子を頼む。」
「了解。」
そういうと、悠斗はその子をおんぶした。お姫様抱っこでは、銃が構えづらいからである。
車のところまで歩くと、座席に寝かせた。
「大丈夫か?」
「みず、を…下さい、ますか…?」
「待ってろ。今持ってくる。」
悠斗はペットボトルを持ってくると、ストローを付けて口元に持っていく。
そのストローからゆっくりではあるが飲んでいき、半分くらい飲むと口を放した。
「ありがとうございます。」
声はまだ小さいが、普通に喋れるようだ。
「どうして君一人で?」
「本当はもっといたんです…。でも、食料を取ってくるって言ったきり、誰も帰って来なかった…。」
「そうか。ごめんな。辛いこと思い出させて。」
「いえ、大丈夫です。…あの、お名前は?」
「槇原 悠斗だ。君は?」
「私の名前は永森 水咲と言います。」
グギュルルルル~~。
「……。」
沈黙が流れる。
(いま、お腹鳴ったよな。)
「なぁ……。」
「……はぅ。」
「お腹、空いたのか?」
「…空いてないです。」
「いや、でもお腹鳴ったよな。」
「鳴ってないです!」
グギュルルルル~~。
「あのさ。」
「…あぅ。」
『おう、悠斗!その子腹減ってるんだろ?味噌汁の余り有るから食べさせろよ。』
(捨ててなかったのかーーーー!!!駄目だ!今水咲に食わせたらショック死する!)
「あの、その味噌汁下さいますか?」
(…終わった…。)
数分後、椀に入れられた味噌汁(?)が姿を現した。
何故だろう。見ただけで胃が痛くなってきた。
今頃ドン引きで…。
「わぁ!美味しそう!」
「は?」
今、美味しそうって言ったのか?
「いただきます!」
驚いてる間に、味噌汁(?)を口に流し込む。
「うわぁ!美味しい!こんな美味しい味噌汁食べたことありませんよ!」
えーっと?
演技には見えないし、我慢しているようにも見えない。
つまりそれは…。
「本気…だと…?」
『嬢ちゃんに喜んでもらえて何よりだぜ!』
結局七杯お代わりした…。
一時間ぐらい経つと、宮本と大関がライフルを抱えて帰ってきた。
パンパンになったバッグの中身はすべて弾丸という事で、予想を超えた大収穫だった。
「今日はここで泊まることにする。見張りは2時間交代だ。水咲さんは休んでいてくれ。以上。」
最初の見張りは悠斗だった。
「じゃあ、俺は見張りをしてくるから、ゆっくり休め。」
「はい!おやすみなさい。」
水咲が寝たのを確認すると、天窓を開けて外を見渡す。
幸いゾンビの気配はない。
暇なので、それを見上げて星を見る。
月にかかりそうな雲が幻想的だ。
「そういや、麗香元気かな~。」
一日会わないだけで、不思議と寂しくなる。
「麗香って誰ですか?」
「ホォアッ!」
驚いて天窓の下を覗くと、水咲がこっちを見上げていた。
「え~っと、学校からずっと一緒に逃げてきた奴なんだ。」
「付き合っていらっしゃるんですか?」
「グホァッ!」
なんというか、天然に乗じて凄い質問をぐんぐん突っ込んでくるな。
やめて!俺のライフポイントはもうゼロよ!
という感じで夜は明けたのだった…。
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