酷罠
作戦開始です。
翌日。
悠斗と二班のメンバーはは地下駐車場に居た。これから物資調達作戦が始まるのだ。
大関が全員に昨日リストアップした武器と食料、そして通信機を渡した。
「現時刻、0900時を持って作戦を開始する!では、分乗開始だ!」
と言い大関が指さした方向には三台の車があり、それぞれが装甲を追加されていた。
中には悠斗の車もあった。
「まず一号車!」
悠斗の車を指さす。
「一号車に乗る者を指名する!呼ばれたら返事をしてくれ!」
「はい!」
全員が返事をする。
「一号車長!槙原悠斗!」
「はい!」
「搭乗員は宮本 琢磨だ!」
「はい!」
返事をしたのは昨日の学生だった。真面目そうだな。
「一号車の役割は、主にゾンビの排除と物資調達時の護衛だ!つまり戦闘を主にやってもらうと謂うことだ。解ったな?」
「了解!」
暫く説明があり、分乗が終わった。
戦闘担当の一号車は悠斗が運転で宮本が天窓から援護。
建物内調査担当の二号車は山本が運転で大関が助手席から援護。
物資回収担当の三号車は新田 信吾が運転で内藤 孝が助手席から援護だ。
そして、地下駐車場のゲートが開かれ、地上までの長い道が開かれた。
通信機から大関の声が聞こえる。
『一号車、発進せよ!』
「了解!」
悠斗がアクセルを踏み、車が弾かれたように発進する。
入口の方には、すでにゾンビが音を聞きつけて数匹集まってきた。
「宮本!あいつらを退かせるか!?」
「任せて!」
宮本がM24を構えて射撃体勢に入る。
ドン。ドン。ドン。
発射音が鳴るたびに、ゾンビが吹き飛んでいく。
「なかなかやるじゃねぇか!」
「射撃だけなら、ね!」
ドン。ドン。ドン。
またもや発射音が鳴り、出口に群がってきたゾンビを吹き飛ばす。
「突っ切るぞ!」
「了解!」
アクセルを最大まで踏み込み、出口から飛び出す。
そして後続の車が来たのを確認すると、悠斗は警察署に向けてハンドルを切った。
発進してしばらく経ち、通信機を取り出す。
「こちら槇原。大関。応答せよ。」
『こちら大関。何かあったか?』
「いえ、通信の練習をしておこうと思いまして。」
『そうか。とりあえず今は警察署だ。何かあったらまた連絡してくれ。以上。』
悠斗は地図を取り出し、道を確認しながら角を曲がる。
警察署までは後10分ほどだ。
その間に気になっていたあの事でも聞いてみるか。
「宮本ー。」
「どうした?」
「お前なんで銃使えるんだ?」
「あぁ、僕は日本で生まれたけど、父親の仕事の都合で小学校の時にアメリカに住んでたんだ。そのころから銃が好きになってね。だからよく銃を撃ちに射撃場に行ってた。特に、スナイパーライフルは元軍人の教官に厳しく指導されてね。中学の時に日本に帰ってきた。」
「ははっ。まるでアニメみたいな設定だな…。おっ?」
悠斗が見つけたのは、横転したトラックだった。
普通なら無視して行くのだが、道を塞いでしまっている。
「こちら槇原。大関。応答せよ。」
「こちら大関。どうした?」
「道がトラックで塞がってます。どうしますか?」
「そうだな…。よし。予定と変わるが、次の交差点を右に曲がってくれ。」
「了解。通信終了。」
ハンドルを切る。
曲がった先にあった道は、かなり長い直線道路だった。
その道路をゾンビを轢きながら、進んだ。
その道を2分程走ると、バリケードが張り巡らされた公民館のような建物が見えた。
「大関。バリケードが張られた公民館があります。どうしますか?」
『うむ…。生存者がいるかもしれん。とりあえず、声をかけてみよう。』
車を止めて、2号車と3号車の面々が車を降りる。
「一号車はここで周囲の警戒だ。我々は中に行って調査してくる。」
といい、大関たちは公民館のバリケードを越えた。
(さて、どんなもんかな…?)
と、M16の民間版であるAR-15を持った男━━━━━━━大関は考えた。
これくらい頑丈なバリケードを持った建物であれば、少なくとも誰かはいるだろう。
…人間かゾンビかは解らないが。
とりあえず、声をかけようとする。が、建物の上から初老の男性が顔を出した。
「おぉ、救助に来て下さったか!すいませんなぁ。我々は食料が無く、丸一日飲まず食わずで。ささ、中へどうぞ。」
「おぉ!生存者だ!やったぜ!」
と言いながら、内藤が玄関の頑丈そうな扉の前に行く。
…何かおかしい。
そして、扉を開けようとする。
…なんで救助に来たのに、あの老人以外の人の声一つ聞こえないんだ!?
「待て!」
「何でだよ!」
といい内藤は頑丈な扉を思いっきり開けてしまった。
しかし、中から出てきたのは本来そこにいるべき人間ではなく、白濁した目と異常な食欲を持つ━━━━ゾンビだった…。
内藤が扉を開けた瞬間に、ゾンビの中に埋もれていく。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!なんで、なンデッェェェェェエエエエエエッエェ!!!」
「内藤!」
新田が叫ぶが、もう遅い。
最早内藤はゾンビの間から体の一部を覗かせるくらいしか見えない。
「ハッハッハ!皆メシだぞぉう!」
「クソッ!あのじじい狂ってやがるッ!総員撤退せよ!」
ダン。ダン。
即座に命令を下し、襲い来るゾンビを的確に打ち抜く。
「槇原!応答せよ!」
「どうしたんですか!?銃声が…!」
「内藤がやられた!罠だ!我々は嵌められたんだ!」
「そんな!」
「宮本は撤退の援護をしろ!槇原は車でバリケードをぶっ壊せ!」
「り、了解!」
「いくぜっ!」
悠斗はアクセルを踏み込み、鉄柵と金網で出来たバリケードを車で押し倒した。
「皆!こっちだ!」
大関さん達がこっちに向かってくる。もちろんゾンビも。
「宮本ッ!」
「解ってる!」
ドン。ドン。
発射音が響き、山本に噛みつこうとしたゾンビが吹き飛ぶ。
「すまん!助かった!」
「礼はいいから!早く行って!」
「お、おう!」
大関さんたちがバリケードを後にし、車に乗る。
『一号車!こっちは準備ができた!発進せよ!』
「了解!」
と言いアクセルを踏む。
悠斗たちは仲間を一人失いながらその公民館を後にしたのであった…。
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