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ILIAD ~幻影の彼方~  作者: 夙多史
Epilogue
119/119

118 繋ぎとめた世界で

 ――セトル。

 あたしたちのあの戦いから、一年が経ったわ。

 セトルは、結局帰って来なかったよね。でも、あたしは消えちゃったなんて思ってないよ。いつまででも、待ってるつもり。

 でも、セトルのおかげで世界は救われたんだよ。

 今、あたしたちノルティアンも、アルヴィディアンも、そしてハーフも、みんながみんな力を合わせて頑張ってる。

 しぐれはアキナの次期頭領だってさ。フラードルで話した通りだね。

 ウェスターは軍には戻ってないみたい。でも、世界復帰には全力で力を貸してるよ。

 ノックスは……よくわかんないけど、やっぱり世界を放浪してんでしょ。

 正式に王女と認められたシャルンは、ハーフの差別をなくすために世界を奔走中。アランもその手伝いってことでアスカリアにいないのよ。

 なんだか知らないけど、アランには軍から声がかかってるみたい。アランの実力があれば将軍になることも夢じゃないってさ。その将軍が二人もいなくなっちゃったから、ウルドさん一人で大変みたい。

 あたしは、結局アスカリアで平凡に暮らしてる。みんな頑張ってるのに、って言わないでよ。あたしだってそれなりに頑張ってるんだから。

 この前だってミセルが――――。

 ――。


        ✝ ✝ ✝


 届くことのない手紙を書いていたサニーの下に、ドアを勢いよく開けて父・ルードが、酷く慌てた様子で部屋に入ってきた。

 咄嗟に手紙を机の引き出しに隠すサニー。そこには書き溜めた沢山の手紙が詰められていた。

「どうしたの、パパ?」

「サニー! さっきイセ山道で――――」

 その後言った父の言葉に、サニーは驚愕し、家を飛び出した。

 彼女は走る。

 表情に驚きと歓喜の色を全面的に表して、走る。

 ただひたすらに、父親の言っていたイセ山道に向かって。

 今日は道に迷わない。迷ってなんかいられない。

 だって、だってそこには――



 父に言われた場所に辿り着いたサニーの前には――何もなかった。

 息を切らし、肩で息をする。

 ――何もない。誰もいない。

 もしかしてからかわれたんじゃ……。そう思った。

 パパに聞いた話では、この辺りに光の柱が落ちたって……。

 何度辺りを見回しても、やはり、何もないし、誰もいない。

「あは、あはは……」

 力なく、酷く残念そうに、彼女は笑った。

(そうよね。そんなこと、あるわけないよね)

 パパの様子からして、からかいではなかったと思う。だったら、たぶん見間違えだろう。

 そう思い、彼女は踵を返した。帰ったらパパを怒鳴りつけてやる。と、その時――

 じゃり、と彼女の後方で誰かが立ち止まる音がした。

(誰? まさか……ううん、でも――)

 振り向くのが怖い。もし違ってたら。そう思うと、振り向く勇気が湧いてこない。このまま走って逃げてしまおうか、と考えた時、後ろの人物が声を発した。

「――ただいま(・・・・)」

「!?」

 彼女の中で恐怖が去り、確信が生まれる。体が震える。瞼が熱くなる。目から液体が漏れる。

 ――こんな顔は見せられない。

 彼女は服の袖で涙を拭き、小さく息をついて自分を落ち着けせ、そして、言う。あの日、あの日に交わした約束。何度も夢に出てきた、その言葉を――



「――おかえり、セトル!」




これにて完結です。

ここまでこんな黒歴史にお付き合いくださった物好きゲフンゲフン! 読者様に心の底から感謝を^^

できればこの後書きを見ているのは作者だけという事実であることを祈りつつ、【ILIAD ~幻影の彼方~】を終了させていただきます。


もしかすると、この作品のキャラを他の作品に再利用することも充分考えられます。主にシャッフルとかで(笑)

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