表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ILIAD ~幻影の彼方~  作者: 夙多史
Episode-16
118/119

117 テュールの使徒

 残されたセトルは暴走するテュールマターと向き合い、それに向かって両手を翳す。

「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 残っている神霊術を使う気力を振り絞り、セトルはマターに力を干渉させる。外部から止めようとするのなら、破壊するしかない。だが、それは絶対に不可能な上、もし破壊できたとしても、それでは世界は助からない。

 だから、内部から鎮圧させるしかない。

「う……ぐっ……」

 凄まじい力の反発を受ける。このままでは気力が尽きる前に身が持たない。と――

「肩の力を抜け、セルディアス」

 ありえない声が聞こえた。

「兄さん!?」

 セトルの肩に手を優しく乗せた声の主は、ボロボロの状態で立っているワース、もとい、ガルワース・レイ・ローマルケイトだった。

「兄さん、何で生きて……」

「お前がそう望んだから、だろ」

 確かに、できれば死んでほしくないとは思っていた。ワースは、たった、たった一人の肉親だから。

「勝負はお前の勝ちだ。だから、オレは全力でお前をサポートしよう」

 そう言って、ワースもマターに手を翳し、力を干渉させる。我ながら最後まで弟思いのバカ兄貴だな、と彼は思い、薄らと口元に笑みを浮かべた。

「オレたちはテュールの使徒だ。神の望まない結果を出すわけにはいかない」

 力の反発が緩む。

「いける……いけるよ、兄さん!」

「馬鹿。最後まで気を抜くな」

 ワースの言う通り、力の反発がまた増す。それも、先程よりも強く。

「一気に行くぞ、セルディアス!」

「わかったよ、兄さん!」


 辺りが真っ白な光に包まれた――。


        ✝ ✝ ✝


 しばらくして、

 地上から見える空に架かった光の橋――『神の階』が、

 上層部の方から、

 まるで幻だったかのように消えていった。


 ただ一つ、大きな輝きを放つ星だけを残して――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ