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ILIAD ~幻影の彼方~  作者: 夙多史
Episode-16
114/119

113 衝突する神剣

 神の階出現により下界はパニックに陥っていた。

 軍がそれをどうにか抑えている状況だ。

 事情を知らない者は「世界の終りだ!」と叫び、知る者はただ祈るしかなかった。

 王室、アスカリア、アキナ、そこにいるほとんどの者たちが不安な表情で天に走る光の軌跡を見上げていた。


         ☨ ☨ ☨


 その光の軌跡の最奥部。そこに世界の運命を決める兄弟が対峙している。

「サニーは下がってて」

 精霊神ピアリオンが宿る〝神剣〟ミスティルテインを片手にセトル・サラディン、またはセルディアス・レイ・ローマルケイトは、もう片手で後ろの少女に下がるよう示す。

「セトル、でも」

 サニー・カートライトは心配な顔をする。だが――

「サニーの攻撃呪文は『神壁の虹(ヘブンリーミュラル)』を纏っている兄さんには効かない。僕一人でやるしかないんだ」

「セトル……わかった。でも回復がいるときはいつでも言ってね!」

 そう言って彼女は数歩下がる。実際、セトルの言う通りである。後方支援しかできない自分が前にいても、ただ邪魔になるだけだ。

 セトルは彼女とは逆に数歩前進する。

「行くよ、兄さん」

「ああ、もう前置きの言葉はいらない」

 サニーの視界から、二人の姿が消えた。と思った時、離れた場所で剣撃音、そしてセトルとワースが組み合った状態で現れる。

 二人は互いに飛び退り、同時に剣を振り上げ、同時に振り下ろす。

「「飛刃衝ひじんしょう!!」」

 裂風同士の衝突。

 それを突き抜け、セトルはワースに刺突の構えで突進する。が、あっさり飛んで躱される。高速回転する光の円盤が頭上から飛んでくる。それをセトルは神剣で受け、弾く。

 また、両者が消える。剣撃音だけが辺りに響く。

 サニーは何もしないでただ彼らの戦いを見ていた。いや、何もできないから呆然としていた。実際、今も何が起こっているのかさっぱりわからない。これが神剣所有者同士の戦いなのだろう。自分がついていけるはずがない。

 神速の領域での戦い。

 剣を振り、躱され。剣を振られ、こちらも躱す。まだ互いに傷一つ負っていない。

「――閃光滅追牙せんこうめっついが!!」

 セトルが回転斬りに加えて突きを放つ。だが、ワースはそれをいとも簡単に捌き、横薙ぎに一閃する。そこに雷霊素(エリクスピリクル)が集中。神剣が電撃を帯びる。

「――刃雷閃(じんらいせん)!!」

 セトルはそれを大きく後ろに飛んで躱す。と、目の前には既にワースが迫って来ていた。セトルは身を捻り、彼の顔面に向かって蹴りを入れようと飛び上がる。だが、向こうも同じように蹴りを繰り出していた。

「「飛蹴連舞(ひしゅうれんぶ)!!」」

 足技のクロスカウンター。互いにこれが一発目。同じ技で力も差して変わらない。だが、経験の差で技のキレはワースが上。セトルの方が僅かにダメージが大きい。

 床を滑り、セトルは蹴られた頬を押さえて立ち上がる。

(流石兄さんだ。でも、初めて一撃入れられた)

 前にみんなで戦った時もそうだ。結局兄に一矢報いることなく全滅した。しかし今回は違う。神剣のおかげだろうか。

「強くなったな、セルディアス」

 そう言える分、ワースはまだ余裕だ。ゆっくりと掌をセトルに向ける。青白い神霊術の輝きがそこに集い、そして――バカでかい光線となって放たれる。

 速い。とてもじゃないが避けられない。

 その時、横から衝撃は入った。サニーが飛び込んでセトルを突き飛ばしたのだ。彼女の足にワースの光線が直撃。

「うくっ!!」

 顔を引き攣るサニー。彼女はそのまま床を転がった。

「サニー!」

 セトルが駆け寄る。サニーの両足は焼け、自分では立てないほど酷かった。

「セトル、大丈夫だった?」

「それはこっちの台詞だよ。下がっててって言ったのに」

「でもそれじゃ、セトルがやられてた。――あたしなら大丈夫だから。早くワースを」

 セトルは頷き、ワースを睨む。

「続けよう、兄さん」

「そうだな。それに、下もそろそろ終わるころだろうし」


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