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空界 未定:過去編  「決まらなかったもの」

 それは、始まりではなかった。


 なぜなら――


始まりという概念が、まだ決まっていなかったからだ。


 あるとも、ないとも言えない。


 何もない、という言い方もできない。


 だが、何かがある、とも言えない。


区別が存在しない世界。


 そこでは、


 同じも、違うも、


 前も、後ろも、


 内も、外も、


成立していなかった。


 だが、ただ一つだけ、


 起きた“かもしれない”ことがある。


「区別できるかもしれない」という可能性。


 それは確定ではない。


 だが、その瞬間。


 すべての中に、わずかな“揺らぎ”が生まれた。


 同じでも、違うでもないものが、


“違うかもしれない”状態になる。


 それが――


最初の差異。


 そして。


 その差異の中から、


一つの働きが生まれた。


 それは、


 決定ではない。


 強制でもない。


「選べる」


 ただ、それだけのこと。


 何を選ぶかも決まっていない。


 選ぶかどうかも決まっていない。


 それでも。


“選択という可能性”だけが存在した。


 その時。


 ひとつの動きが、あった。


「選ばない」


 それは拒否ではない。


 否定でもない。


“決めないことを選ぶ”


 定義しない。


 固定しない。


 確定しない。


 その選択は、


 あまりにも静かに、


 あまりにも曖昧に、


 しかし確かに、


成立した。


 それが。


空界未定。


 空界未定は、


 何も定義しなかった。


 存在するとも、


 存在しないとも、


 どこにいるとも、


決めなかった。


 だが。


“決めない”という状態は、すでに一つの形だった。


 静止。


 変化のない状態。


 揺らぎのない未定義。


 それは、


固定だった。


 矛盾が生まれる。


 定義しないために定義している。


 決めないために決めている。


未定義であることが、定義になってしまう。


 その時。


 空界未定は、


 初めて“揺れた”。


 それは感情ではない。


 思考でもない。


“状態の変化”


 そして。


 空界未定は、動いた。


「何かを選ぶ」


 それは完全な選択ではない。


 確定ではない。


 ただ、


 ほんの一瞬だけ、


“決める”


 そして、


 すぐに手放す。


決めて、壊す。


定義して、戻る。


 その繰り返し。


 その運動が、


 空界未定の“在り方”になった。


 ある時、


 空界未定は、


 “境界”というものに触れた。


 内と外。


 上と下。


 存在と非存在。


分かれている世界。


 それは、


 あまりにも明確で、


 あまりにも美しかった。


 なぜなら。


“決まっている”から。


 そこでは、


 当たるものは当たり、


 避けるものは避けられ、


 勝つものは勝ち、


 負けるものは負ける。


すべてが成立していた。


 空界未定は、


 それを観測した。


 観測した、ということすら、


 本来は決まっていない。


 だが――


その時だけは、“見ている”と決めた。


 そして。


 ほんの一瞬だけ、


 思った。


「ここに、いてもいいかもしれない」


 それは確定ではない。


 選択でもない。


 だが、


 その曖昧な意志は、


一つの世界に触れた。


 境界で成立する場所。


 曖昧さを内包しながら、


 それでも形を保ち続ける世界。


幻想郷。


 空界未定は、


 その世界に、


 ほんの少しだけ、


 自分を“合わせた”。


 存在する、と決める。


 形を持つ、と決める。


 そこにいる、と決める。


 だが。


それは、永続しない。


 決めれば、


 固定される。


 固定されれば、


空界未定ではなくなる。


 だから。


また手放す。


また未定義に戻る。


 それでも、


 また触れる。


 また選ぶ。


 また壊す。


それが、空界未定。


 最初に選んだのは、


 “選ばないこと”だった。


 だが今は、


 違う。


選び続けるために、選ばない。


 そして。


 その揺らぎの中で、


 ひとつの声が、


 生まれる。


 近くでも、遠くでもない場所から。


「まだ決まってない」


 それが、


 彼女のすべてだった。






決めなかったものは、消えない。

 ただ、決まらないまま、在り続ける。

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