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世界樹の記憶《リアラ》  作者: 鈴木 厳流彩


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20章


一節



 結局、俺とリアラはスタジアムの入場列にもう一度並ぶことになった。

 試練の間のローズの部屋は、すでに木っ端みじん。クイズどころではなかった。

 新たに通されたのもまったく別の部屋で、今度のクイズは……もう、なんというか。


 語るに値しない。


 いやほんと。

 ホットドッグの賞味期限のほうが、よほどシビアだったのである。

 ちなみに、リアラが用意したホットドッグ三本のうち、二本は彼女の胃袋に収まった。しかも笑顔で。


 というわけで。


「……なんとか、間に合ったみたいですね。」


 午後のスタジアム。

 豪奢な造りの観客席を横目に、俺たちはようやく控え室に戻ると。


 「遅かったじゃねぇか、お前ら!第一試合終わっちまったぜ!!」


 控え室のソファにふんぞり返っていたニヤニヤ顔のバッカが、俺たちの肩をバンバンと力強く叩いてきた。


 「え……!? 終わったって……試合、ですか!?」


 「まさか……そんな……。」


 俺とリアラの顔から血の気が引く。 準決勝、間に合わなかった?っていうか、勝負ついてる!?


 そこに、隣から凛とした声が。


 「ご安心ください。責任を持って、勝たせていただきました。」


 整った姿勢で立つレスカーが、ピクリとも動かずに淡々と勝利を告げる。


 「えぇぇええ!?」


  「さ、三人だったんじゃ……!?でも、相手って……。」


 「ブロックス、だよ。人気ランキング1位の、あのブロックス。」


 バッカがやけに明るい調子で言い放つ。


 その名を聞いた瞬間、俺とリアラの脳内に、予選のバトルロワイヤルでゴールを塞いでいたテトリーヌの姿が浮かんだ。


 「え……あのブロックスを三人で……?」


 無言でこくりと頷くレスカー。


 「そ、そんな……本当に……?」


 「それ、どうやって……?」


 口を揃えて疑問を投げ掛ける俺とリアラの問いに対し、オトウトの口元がニヤリと歪んだ。



二十章 二節


 ブロックス。


 《鉄の処女アイアン・メイデン》の異名を持つ絶対的キーパー、テトリーヌを擁する伝説のチーム。

 今大会もまた、失点ゼロのまま、当然のように勝ち上がってきた。

 英知の試練においても、彼らが強いことは疑いようがない。


 計算を司る先パイ。

 古今東西の鉱石と遺物に通じたジェミニ。

 固い絆で結ばれた兄弟、ぷよとブヨ。

 全員が役割を理解し、互いを信じ、迷いなく動く。


 そして今年、彼らはついにこの部屋を引き当てた。

 天上の万神殿を思わせる、荘厳な白大理石の空間。

 柱の向こうから、柔らかな光が降り注ぐ。


 その中央に立つのは、慈愛に満ちた微笑みを湛える一体の天使。

 当たりだ。


 彼らは知っている。

 この天使は“優しい”。

 多くを求めず、怒らず、ただ静かに問いを投げかける存在だ。


 「1+1は?」


 強い絆で結ばれた 兄弟 ぷよ とブヨがすぐに反応し、存在を誇示するように跳ね上がる。


 沈黙。


 天使は微笑んだまま、ため息をひとつ。


 「好きな色は、なんですか?」


 すかさずジェミニの全身が、ピカピカと光る。

 そこに言葉はない。


 沈黙。


 天使は再び、静かに息を吐いた。


 部屋の入り口を見ると、扉を塞ぐかのように、テトリーヌがぴったりとはまりこんでいた。

 テトリーヌだけではない。ブロックスの誰もが知っている。


 この天使は、かつてないチャンスなのだ。

 慈悲深い 女神 にすがる ような思いで、皆が皆、 一丸となって この試練に挑んでいる。


 だが、 試練の間 には共通して一つのルールがある。


 言葉による回答。


 その永遠に覆せない壁を乗り越えるため 奮闘する 5体を、 天使は哀れみの目で見るしか出来なかった。


 永遠とも思える数秒の沈黙の後、天使は静かに天を仰ぎ、再び、今日101回目のため息をつくためのクイズを絞り出した。



二十章 三節「フセンショウダ」


 「フ……セン……ショウ……ダ」


 笑みのこぼれたオトウトの口から、予想外の言葉がはっきりと聞こえた。


 「えっ!?不戦勝!?てか、共通語?今、共通語言いましたよね!?」


 俺が思わず声を上げると、隣のリアラも「ま、まさか……!」と息を呑んでいる。

 やれば出来るじゃないか!


 すると、レスカーがストンと立ち上がり、さらりと告げた。


 「そうなんです。チーム《ブロックス》は、今年もまた決勝に来ませんでした。」


 「え……どういうことですか?」


 「彼ら、毎年予選は通過するんです。けれど……過去一度たりとも、準決勝以上のステージには現れたことがありませんでした。」


 「そ、それって……。」


 「言葉通りです。予選は完璧。でも本戦になると……姿を見せない。」


 レスカーの口調はどこか寂しげで、それでいて達観したようなものだった。


 ブロックス。

 あのバトルロワイヤルのゴールを塞いでいた伝説的チームが……まさか、決勝ボイコットの常習犯だったとは。


 その場に微妙な沈黙が落ちかけたその時、バッカが嬉しそうに口を開いた。


 「ウンコしてんじゃないのか?」


 ズガァァァアァァン!


 轟音が轟く中、目にも止まらぬ早さで雷の扇が唸りをあげ、再びアクアバウト控え室の天井に黒こげになったバッカが植え込まれた。

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