⒋僕は出会いを知らなかった
みんなのアイドルタマちゃんこと、この僕は闘技場から逃げています!
僕が光ってからそんな時間は経っていないのに僕の知名度は大爆発中!
きっと地球のSNSなら“#タマちゃん最高“で埋め尽くされているだろう。グワッハッハ!
ーーあれ、僕こんなことどこで覚えたんだろう?
「あれ、“タマちゃん“じゃない?」
「さっき“マジックビジョン“に映ってたあれか?」
「“ねこ“っていう種族の?」
僕の知名度が爆上がりなのは「マジックビジョン」のせいか、ナイスにゃ!マジックビジョン先輩!
ーーチャリンッ
ああ、なんて気持ちがいい一日にゃんだろう。
僕は走り出す。
ーーチャリンッ
最高な一日である。
ーーチャリンッ
神様、ありがとう。
その後もお金が落ちる音が続く。全ては同一人物だ。僕は落としまくってる人にバレないように距離を空けながら全ての銅貨を回収していく。
2、3分ずっと銅貨を取っているせいでマジックバックの容量が不安になる。30枚以上は取っているのではないか
ーーチャリンッ
ッッッ!! 金貨だ!!
僕は走った。本気で。戦闘中以上の勢いである。
ーーガシャンッ
……………捕まった。
これが誘導というやつか…終わったにゃ…
「こんにちは。タマちゃん。人の言葉わかるでしょ?」
「にゃー。」
「危害は加えないからついてきてくれない?報酬は大金貨3枚。」
「にゃああああ!!」
僕は檻から出された。その時にバンドが見えたのだが、このお金持ちは“セファ・オリエット”僕が銀貨を盗んだ相手であり、実況であり、銅貨と大金貨をくれる人だ。
「今から私が勤めてる商会の店舗に行くよ。」
「ニャー!」
そこから5分ほどか、大きなお店がある。今は閉店時間っぽいが、並んでいる冒険者らしき人がかなりいる。きっと大商会というやつだろう。
セファが店の扉の前に立っている警備と話している。
「旦那と会えるか?」
「商会主の客人でしょうか?………ああ、セファ様ですね。どうそ、お入りください。」
「タマー!おいでー!」
「にゃー!」
中もとても広い。ポーション、剣、防具、包帯、探せばなんでもありそうだ。
僕たちは2階に上がる。少し先には大きめの扉がある。この中に旦那とやらがいると容易に想像できる。
ーーコンコンッ
「だんなー、入ってもいいかー?」
ーーガチャッ
「おいおい、入っていいか聞くなら答えるまで待てよ。」
「いいじゃないか、」
セファが旦那の机に両肘を置き、体を逸らし、色仕掛けを仕掛ける。
「俺はお前を女として見ていない。」
「チェエッ。タマちゃん連れてきたよ。」
「にゃー!」
これが辛辣というやつなのかにゃ。僕はセファさんかわいいと思うんだけどな。
いや、これはお金による洗脳の効果か…!?やばいにゃ!
「やあ。タマちゃん。俺はここの商会の主をしているガンドルだ。よろしくな。」
「ニャー!」
「セファ、動物との意思疎通ができる魔道具の在庫あるか?」
「確認してきます。」
セファが部屋から出る。そして扉の反対で男の子の声とセファの声が聞こえる。
ーー
「セファさん、こんにちは。今日はどうしてここに?」
「あ、今猫ちゃんがきてて、動物との意思疎通の魔道具ってある?」
「ないっすよ。ドーン商会で先週見かけましたけど…ちょっと親父のとこ行ってくるんで!」
「ちょっ!はぁ、買いに行こうかどうしよう……」
ーー
「おやじー!入ってもいいか?」
「タマはいいよな?」
「ニャー!」
さっき子だにゃ。
ーーあれ、このこ獣人じゃん。やったー!!
「これがねこのタマか。かわええー」
「お前もマジックビジョンで見たのか?」
「当然見たわ。親父を真似したコロシアムが荒らされてるんだぜ。最高じゃねーか。」
「……俺に似たか」
「にゃあ? 【しっぽが触れないぞ?】」
「こいつ喋れてるじゃん!すげー!!ところでしっぽ?」
「にゃ? 【僕の声って?】」
「え?」
この子、何かがおかしい。ついてるはずのしっぽが触れないし、僕と会話するし…
多分獣人なんだからだと思うんだけど…こいつ獣人なのか?
「親父!これ見て!かわいい石像!好みでしょ!」
「……そうだが、それ一応“動物の神”なんだから丁重にな。」
「にゃあ! 【セファみたい!】」
「フッッ……ブワッハッハ!!」
「親父、これセファみたいだって!グワッハッハッハ!」
「そもそも、それは幻聴だろ!!」
旦那の顔が赤い。照れてるんだろうにゃー。なんて微笑ましいんだ。
ッッそうにゃ!大金貨貰わなくちゃ!
僕はそう思い、旦那のテーブルに飛び乗ろうとしたーー
「にゃっ!」
テーブルに置かれたセファの石像に足を取られた。
ーーそして僕は吸い込まれた




