16.タマちゃん、ずっと一緒。
僕の友達だったセファ……。
けれど今のセファは冒険者ギルドの飼い犬にゃ。
あんな依頼を受けて、冒険なんてしない。
ガンドル商会を出て、僕は獣人の姿に戻る。
「そんなんでいいのかにゃ……」
猫のままでも喋れるけど、外では人型にならないといけない。
尻尾も隠さず、そのまま外への入り口へ向かう。
「あの尻尾、私の娘につけたいわ〜!」
「きゃー! それ最高じゃん!」
僕の尻尾はよく目立っている。嬉しい。
ーーやっぱり僕は輝かないと。
それが僕のモットーにゃ。
僕は城門──いや、改札の前に立った。
「僕は冒険者になるにゃ。さらばにゃ、地元。」
「《ウインドバースト》!」
音速を超える勢いで外へ飛び出す。
西門の外は、ずっと見たかった広い草原。
風が冷たくて、胸の奥が少しだけ痛い。
さっきまでいた場所は、グランデリア王国・西町。
このまま西へ冒険にゃ!
負の感情で曇り始めていたタマの心は、少しずつ晴れていく。
タマはセファと出会って冒険者になりたいと思った。
ついにその願いが叶うのだから。
「セファにゃ……」
憧れの冒険者セファ。
でも、僕が思っていた“冒険者”とは違った。
あんな冒険者、辞めちゃえばいいのにゃ……。
「タマちゃーん!」
「セファ? なんで来たにゃ?」
振り返った瞬間、胸の痛みが一気に混ざり合う。
安心、怒り、嬉しさ……全部がぐちゃっと
「一緒に冒険にゃ!」
言ったのはタマじゃない。セファが“にゃ”をつけた。
「セファは街の冒険者にゃ。」
皮肉のつもりだったが、タマの本心を知らなければ伝わらない皮肉。
「私はガンドル商会の冒険者。ガンドル商会って、この国以外にもあるんだよ。」
「セファは冒険者にゃ?」
タマの気持ちを理解しているセファ。
ーータマはギルドの飼い犬じゃないにゃ。
じゃあ、ガンドル商会の……?
「私はガンドル商会に勤めるためにギルドカードを取っただけ。
だけど今は、ガンドル商会から離れた。」
「浮浪者にゃ?」
よかったにゃ。セファはフリーにゃ。
“一緒に冒険にゃ!”って言ってたけど……
つまり、僕と冒険者になるのかにゃ?
「浮浪者じゃないよ。これからはタマちゃんと同じ冒険者。」
セファは満面の笑みで答える。
「僕と一緒に冒険するにゃ?」
「そうにゃ!」
セファはガンドル商会を離れ、僕と冒険者になる道を選んだ。
赤色の太陽光。そして、タマの薄い緑の髪の毛が赤く光る
小さな光が風に流される。
ーーなんとも……いや、本当に……最高にゃ!!!
「タマちゃんの誤解を解くと、
“修行のためガンドル商会を一時的に離れます”ってだけだからね。」
「修行内容が本当の冒険者!?」
「そう!」
ーーこうして、長いようで短い3年間。
僕たちの冒険者パーティーが生まれるのだった。




