15.再びの世界
「タマにゃ!!」
僕は、みんなが困る前にそう叫んだ。
……ん? 勝手に口が動いたにゃ。これは数時間前の出来事だった気がする。僕、寝たにゃ?
「何があったんだ、タマ。」
この後は……恥ずかしがったジー君が、端っこにいるはずにゃ。
「大丈夫か、タマ?」
ガンドルは無視。視線だけ端っこに向ける。ちゃんとジー君がいる。
これは明晰夢にゃ。夢ならとことんからかって遊びたいところだけど……
嫌われたくないにゃ!
【GMより。ここは“過去”だ。夢ではない。】
GM、つまり神だろう。神がそう言うなら……これは現実にゃ。
ここに来る前、「戻れ」と言われた気もする。
ん? 僕が彷徨ってるのを見て、哀れに思って助言した……?
酷いにゃ!!
「タマ……?」
ジー君の声。あれ? 前は「アレガタマ?」だったはずにゃ。
あ、僕、今もねこの姿にゃ! でも……僕、さっき喋ってた気がするにゃ。
そもそも、なぜ僕は戻ったのか。
なぜ神は僕を手助けしたのか。
神が僕を転生させたことを考えればーー
ーー僕を死なせたくない。失いたくない。
つまり、そういうことにゃ。なんとなくわかる。
酒婆は無理な依頼で僕を飼い殺しにしようとした。
つまり“ペット”。僕は誰のペットにもならない。
「僕、冒険者になりたくない……」
「喋れるのか……? 冒険者……?」
そうにゃ。ガンドルとの商談は、まだしてないにゃ。
ーーガチャッ。
「ちょっと聞いたけど、タマちゃん冒険者になったんじゃないの?」
「セファさん。タマ、喋り始めたんですよ!」
「え、今さら!?」
セファが、当たり前みたいに笑う。
「タマちゃん、薬草採取の依頼はどうしたの?」
「にゃ?……」
ーーなぜ未来を知ってるにゃ?
「おいおい、セファ。タマの処遇は決まってたとはいえ、早とちりすぎだろ。」
「おい親父、タマを入社させるのか?」
「えっ? もう入ってるでしょ? 冒険者だけど……」
セファは“未来”を覚えている。
ジー君によそよそしくされるのは少し悲しいにゃ。
あれもこれも全部、冒険者ギルドのせいにゃ。
そもそも冒険者って何にゃ?
依頼は荷物運び、薬草採取、討伐。
どれにしても、結局は街に戻るだけ。
「いったい何が冒険者にゃ……」
奴らはただの雑用屋。雑用屋を飼い殺すのがギルド。
最悪にゃ。
「タマちゃん……?」
「セファ。ここは“数時間前の過去”。それを覚えといて。」
“にゃ”を一切付けずに言う。
ねこの口から発せられたその声は、恐怖以外の感情を許さないだろう。
ーー僕は、本当の冒険者になる。
僕は尻尾で扉を叩き、ガンドル商会から出ていく。
僕は未来の契約を忘れない。
いつか有名な冒険者になって、コロシアムに出る。
そしてーー物語は再び始まるのだった。
いやあ、自分でも自画自賛したいほど上手く書けました。
商会との関係は一旦なくなりましたが安心してください!
今回は上手くかけた。だから!「すごいですね」って感想とか「グッドマーク」していってください!
これからも連載していくのでブックマークよろしくお願いします!




