1⒊ねこの薬草採取。〜完全治癒魔液(エリクサー)って薬草が要るんだよ〜
「セファ、バイバイ!」
「タマちゃん依頼頑張ってね!」
僕は歩き出したセファを見送り一休みしてから動き出した。
歩き始めんじゃない。動き出したんだにゃ!
「どこから外に出ればいいにゃ…」
「こんにちは獣人さん。」
「誰にゃ!?あ、酒婆にゃ!」
僕をD級にしたギルドの職員である。名前は知らないのでセファから教えてもらった“酒婆”の名を流用している。
「婆って歳でもないし、酒も飲まないのに…酷いよ…」
「にゃぁ…ごめんなさいにゃ…」
「獣人さんは薬草採集でしょ?」
「そうにゃ!けど街の外への出方がわからないにゃ!」
きっとこの流れなら酒婆が案内してくれるはずにゃ!
「じゃあ、依頼頑張ってね!行き方はその辺の人に聞きな!」
「にゃぁ!?綺麗な美しお姉さまぁ!!」
「あら、ふふ。」
勝ったにゃ。酒婆の名をとことんに嫌ってたからそうかと思ったんだけど、さすが僕にゃ!
「美しいお姉さまに是非案内をしてもらいたいにゃ!」
「ギル嬢として新人さんに教育してあげますよっ!」
ギルドから3分ほど歩くと高々とした薄青の城壁がそびえ立っている。
そして道の続きには穴が空いており、改札のようになっている。依頼のときの「改札みたい」とはくらべものにならないほど改札だ。
「へい!いってらー!」
そんな陽気な声が聞こえてくる。
「獣人さん。いくよ。」
「僕はタマにゃ。お姉様は?」
「ふふ。」
無視されたにゃ…
お姉様が冒険者カードとは違うものをタッチして外へ出る。
「酒婆殿、いってらっしゃいませ!」
後ろをついて行った僕は何も言われなかったがお姉様は煽られている。
「チッ」
ーーチャリンッ
「いてて… ありがとうございます!!」
お姉さまが金貨を弾き飛ばした。ちょうど警備の人のおでこに直撃している。
金持ちにゃ…
「僕にもちょーだいにゃ!」
「冒険者は自分で稼ぎなさい」
「にゃあぁ」
外には長い直線の道が続いている。幅は馬車(前世基準)が4台横に並べるくらいの広さだ。そしてその横、数100メートル先には森が広がっている。
「どうせ勉強しないで冒険者なったんでしょ。最初は西の森よ。あれ、タマちゃん?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ニャー!」
僕はねこの姿に戻った。お姉様には悪いけど、あっちで何かが僕を呼んでいる!!
全速で30分ほど走っている。普通なら勘違いだと引き返すものだが、猫は止まらずに走り続けている。
猫の前には壁がある。
「にゃー」
《エアー》の使用だ。これは初始魔法である。
飛翔魔法を知らないタマにとって空を飛ぶのは《エアー》で塵やその他諸々を集めて空を歩くということだ。
僕こんなことできたっけ? それにしても風が気持ちいにゃ。
半ば勝手に僕の体が動くにゃ…
何かが僕の思考に入ってくる。かなり浮かんだところで、ものすごく目の前の壁に突進したくなってきた。
ーーちょっ、だめにゃああああ!!
「にゃあ?」
痛くない。そこは“すり抜けた“
僕の前にはある神々しい花がある。
ーー“神花”。その名の通り神の花。




