幼女魔法講師は冷静である
「次点はシャミャン・ロア・フルー。表が完璧、惜しむらくは」
「……おかしいのです」
「ん?」
「なんで、なんでシャミャン様が一番ではないのです!? 採点を間違えているのです!」
「なんで関係ない君に文句言われなきゃならないのかわからんけど、採点結果に間違いはなかったよ」
「そんなわけ!」
「よいのだ、ニコル。吾輩が怠慢しただけのこと」
「シャミャン様!」
「……なんでボクを睨むのかわからないんだけど、シャミャン・ロア・フルーが言ってることが正しいね。あと上司なら部下が間違ってんだから叱れ。なあなあにすませんてんじゃねぇよ」
ニコルは、悲壮な顔でシャミャンを見たかと思うと、目つきを鋭くして雅琵を睨む。
シャミャンもシャミャンで一見カバーしているように見せかけてただ努力が足りなかったと言ってるだけだ。滅茶苦茶なことを言い出したニコルを叱るでもなしに。こうして逆恨みが生まれていくのだろうな、と雅琵は舌打ちした。まぁ、逆恨みどころかお前関係ないじゃん? ってな恨みなわけだが。
ぱちり、雅琵に怒られたことに意味がわからないとばかりにゆっくり瞬きをしたシャミャン。
「言えばいいってもんじゃないけど言わなすぎても良くないから、後で叱っておくように。シャミャン・ロア・フルーわかったね?」
「……あぁ」
「そんな! シャミャン様!」
「さて、どうでもいいけど一位のひとにはご褒美がありまーす!」
「あの空気無視してとか強者っす」
「ありがとう、ボクは実際強いからね!」
片や世界の終わりかというような空気を流すニコルと、そんなの知ったことかと言わんばかりの雅琵。確かに強者である。あと実際強いとか知りたくなかった。
ひょいっと教壇を降りると、アリリアのいる長机の前まで歩いていき、手のひらに乗るくらいのプレゼントボックスを四次元倉庫から取り出し、蓋を開けると、五つほど掴んでアリリアの前に置く。
「あの……?」
「これ、ご褒美のチョコレート。あ、チョコレート嫌いなら飴もあるよ」
「あ、いえ。嫌いではない……です。どちらかというと飴のほうが苦手で」
「そっか、なら良かった」
飴が苦手とかあるん? とちょっと雅琵は思ったが、まぁ唾液が少ないといつまでも口に残るし、苦手な味に当たったことがあるかのかもしれないなと一人納得した。
「いまの内に食べたいものは食べておいたほうがいいよ、次回の授業の後、魔法使いを目指すなら好きなもの、というか一定のものは当分食べられなくなるからね」
「え……?」
「魔法使いは食事管理も自分でしてるから、特に魔技期間の半年は徹底した食事内容から食べ方まで全部意識してもらうから」
気をつけるように、と雅琵はニィっと唇の端をつりあげてみせたのだった。
それと同時に、授業の終了を知らせる鐘が鳴った。




