幼女魔法講師は三回目の基礎授業をする
「あー、おはよー……日差しが眩しいね。ってことで基礎授業始めるよー」
「あの……ソラユキ先生?」
「なに?」
「授業始めるんですよね?」
「そうだけど?」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと寝不足なだけで」
ふぁ……とヴォルの毛に埋もれながら……というか、ヴォルに乗ったまま前に倒れたような体勢であくびを一つ。
「ま、ちょっと頑張るかー。んとこしょ」
流石にこのまま教鞭を取るつもりはなかったのか、のろのろとヴォルから降りて、身なりを正す。
「今日は細かいのをやるよ。次回は小テストだから、ちゃんと勉強しておいで」
まぁこんな基礎問題で赤点はないと思うけどさ。笑う雅琵に、青くなったのは受講している生徒たちだった。
いまでさえ覚束ないというのに、小テスト!? といった心境である。
「最初に魔力中和の話をしようか」
「魔力、中和ですか?」
「そうだよ、ヴィライア・フェルン。魔力はどうやって成り立っていると思う?」
「魔力が……成り立って?」
「どういうことだ?」
「自分だって知らん」
「はい時間切れ。正解は顕現物質と潜在物質から成り立っている、だよ」
欠席のアリリアの分までと意気込んで質問したものの、全く意味がわからず困惑顔のヴィライア。ヴァネッサは隣に座っているハルマガに尋ねるものの、初めて聞く言葉ばかりなのにわかるわけ無いだろうとばっさり切られていた。
「ソラユキ師」
「なにかな、シャミャン・ロア・フルー」
「魔力は触れられるものではあるまい? なぜ二つから成り立つと言えるのか聞いても?」
「ふむ。まず、魔力は炎を想像してくれるといいよ。潜在物質が空気で、実際の炎が顕現物質。空気がないところで炎は消える、逆に空気だけあっても炎はないから意味がない。わかる? お互いがなくては存在できないのが魔力なんだ。その比率は五対五で、アクロフォニアと言うんだけど、この比率が崩れた瞬間、魔力は存在できなくなる」
魔力欠乏症の事例は大体が何らかの理由でアクロフォニアが崩れてしまうことで起こりやすい。
決定的な理由ではないが。そう言われて、魔法医を父に持つヴィライアは驚きに目を見開いた。これは父に伝えなければ、とノートに走り書きをする。
「次に強制解除の話。魔術でも魔法でも起こり得る……というか起こせるものだよ。と言っても簡単な話なんだけど。同じ魔術や魔法を全く同じスピード、ステップ、テンション、ボリューム、コンディション、カーテン、全てが一部の狂いもなく同一のものをぶつければ共鳴しあって消えてしまうんだ。ただそれだけ」
「出来ませんが?」
「ただそれだけって……」
「無茶苦茶っす……」
まるで簡単なことを教えるように言う雅琵に、生徒たちが引き気味に答える。
実際、一瞬の間に相手がなにをどのように唱えるかなんてよほどの熟練者でもなければわからない。
後ろで聞いている講師たちも頭を抱え……一人は魔力欠乏症の役に立つかも! と目を輝かせていたが。




