幼女魔法講師は怒られる
「ソラユキ先生!! ホロウオーバーを起こした生徒がいると耳に挟んだのですが!? しかもその場にあなたもいたとか!」
「あー……アリリア・ツェルンのこと? 確かに居合わせたけど」
「ならなんでホロウオーバーする前に止めないんですか!? あれは命を削るものですよ!?」
「いや、そんなご大層なもんじゃないよ。あれ、杖を手に入れる前……小さい頃はよく起こす癇癪みたいなものだし」
「え、そうなんです?」
「そうなんです」
倒れたアリリアを保健室に送ったあと、目覚めたら食べさせたほうが良いものなどを助言していた雅琵を、放送一つで呼び出したのは理事長だった。
助言もそこそこに切り上げて、理事長室に向かえば相変わらず趣味の悪い金色が輝かんばかりの部屋で、雅琵は怒られていた。
実際、ホロウオーバーしても、その後に栄養があるものを食べ休息を挟めば生命力だって回復する。命を削るなんてものじゃないのだ、本当は。
どっからかでたデマが大きく広がっているらしいと、雅琵は思ったが、ホロウオーバーの状態によっては後遺症も残るし命も危ぶまれる。
デマも全てがデマとは言えないのだ。
「そもそも、家庭環境に問題がある生徒を放置した理事長の責任じゃない? 数回しか会ってないボクの目から見てもアリリア・ツェルンは抑圧されてたように見えたけど」
「うぐっ……それはですね、アリリアくんの家は旧くからの名家でして。あまり強くは」
「そうやって日和見した結果がこれなんだろ。せっかく家から隔離された環境にいるんだからカウンセリングとかすればマシになったと思うけど?」
「う、うぅ……と、とにかく! 今後は気をつけてくださいね!」
「理事長も自分の役目果たしてくださーい」
「わかりましたよ!」
ホロウオーバーをこれからツェルン家に伝えなければいけないだろう理事長に、発破をかけながら雅琵は大きくため息をついて、理事長室を後にしたのだった。




