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幼女魔法講師は問いかける

 瞬きの間に、世界は色と音を取り戻していた。


「アリリア!!」

「アリリアたん! 大丈夫!?」


 悲鳴じみた呼び声はヴィライアのもので、気分は悪くないか、大丈夫かと次々に質問を投げかけているのはユリウネラだ。

 薄く目を開けながらも、身体の力が入らないのか座り込んだまま雅琵にもたれているアリリアは、全ての質問に首振りで答えていた。そんなアリリアに屈んで顔を覗き込んでいるヴィライア。


「ホロウオーバーはしたけど、大丈夫、後遺症も命に別状もないよ」

「なんでそんなことがわかるんですか!? もし、もしアリリアになにかあったら! 大体、見ていたならもっと早く」

「ヴィラ、イア」

「アリリア!」

「いいん、だ」

「でも!」

「……元々、ホロウオーバーは溜め込んだ感情が、杖に溜まった淀みと共鳴して起こる。アリリア・ツェルンの場合は一度吐き出させたほうがいいと思ったんだ」


 後遺症だの命の危険だのでてきたら止めるつもりだったしね。

 そう、静かに呟いた雅琵に、アリリアが目を閉じたまま小さく微笑んだ。

 今まで、アリリアと長く一緒にいたが、笑ったのをアリリアの母が亡くなってからはほとんど見たことがなかったヴィライアは、愕然とした。


「溜め込んだ、感情と、共鳴? アリリアは、アリリアはずっと我慢してきたから、ホロウオーバーを……?」

「そうだね」

「俺が、俺がついていたのに、アリリアに我慢をずっとさせてきたのか。俺はそのことに気づかなかったのか」

「おっと、ヴィライア・フェルン、君までホロウオーバーしないように。……大丈夫だよ、元々ホロウオーバーなんて物心つくまでにめちゃくちゃしてるもんだから。癇癪みたいなものだし」

「癇癪……。いやー、そんな軽い扱いなのー?」


 ユリウネラの困惑した声が、落ちる中。

 ヴィライアはアリリアに向かい合って、なんと言えばいいか声をかければいいのか、お互い躊躇っていた。

 それはアリリアも同じで。だから雅琵は助け舟を出すことにした。


「ねぇ、ヴィライア・フェルン。君はアリリア・ツェルンをどう思う?」

「……っ!」

「アリリアは……アリリアはすごいやつです。いつでも努力を怠らない、それを鼻にかけることもない。頑張り屋で、向上心があって。いつまでも、俺の自慢の親友です」

「ヴィライ、ア」


 その言葉に、アリリアの金色の目から、涙がぼろぼろと溢れる。ぐすっと鼻をすすれば、ヴィライアが涙をハンカチで拭いてくれる。

 わかってくれていた。ヴィライアは、アリリアが頑張っていたことを知っていてくれた、認めてくれていた。そして、自慢の親友だと、言ってくれた。

 そのことがアリリアには何よりも嬉しかった。父はもう、アリリアの頑張りを認めてくれないかもしれない。それでも、アリリアのことを認めてくれるひとはずっと側に確かにいたのだ。

 何も見えていなかったのはアリリアの方。

 張っていた気が抜ける。涙をこぼしながら、満足そうに笑顔で目を閉じたアリリアは、そのまま保健室へと運ばれたのだった。

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