【閑話】幼女魔法講師は囲まれた
「さぁ、先ほどの資料を! 特にリィン文字の表を!」
「いや、教務部に頼んでおくから後でに」
「ソラユキ先生は授業後終わったら即配られるとおっしゃいましたよね!? 教務部に任せておいたら明日になってしまいますぞ!?」
「おっしゃってねぇし、明日でも早いだろ」
授業が終わった途端、最初は誰だったのか知る由もないが。走り寄ってきて、今すぐに資料を配れと詰め寄ってくる講師陣に嫌そうな顔をする雅琵。
誰だって自分より背の高いおじさん連中に囲まれたら、嫌なものである。
「雅琵、口が悪い」
「しょうがなくない? ボク悪くないよね??」
「まぁ……間違っているのは資料を持っていないお前を取り囲む連中だが」
「ほらぁ!!」
ヴォルの同意も得て雅琵は大きく頷いた。
この会話を聞いた、雅琵を取り囲んでいた講師たちは少し気まず気な顔をする。
でも新しい知識! 明日じゃいやいや、今日欲しい! 何なら今欲しい! とばかりに雅琵を解放しない。
ちなみにこの中にエヌ・フレイルもいる。
ふぅー。雅琵が深々とため息をついたことに、勝利した、今すぐに資料を手に入れられると思ったのか沸き立つ周りを、至極冷たい目で見ながら雅琵は続けた。
「魔術陣解析学、ウァレフガン・レトガニホ先生。研究は楽しいかな?」
「は? ……もちろん! このリィン文字を解読できれば更に研究が」
「そう、研究。ボクも研究や実験それに関する考察と論文を、書いたりしていてね? こう見えてわりと忙しい。しかもこの身体だからね、体力とかも大人に比べれば少ない。君たち全員、ボクの楽しみを奪う気か?????」
空気に色がついているのなら、いま雅琵を取り巻いている空気はどす黒いのだろうことだけはわかる。
にっこりとわざとらしく浮かべた笑みは確かに笑っているはずなのに、冷や汗がでてくるほどの圧力をかけてくる。
じりじりと一人、また一人と下がっていって隙間が空いたとき。ヴォルにひらりと跨った雅琵は、そのどす黒い圧のある笑顔のまま、悠々と隙間を通り教室をでていった。
なお、教務部に提出された資料を「騒ぐだろうからできるだけ早く配ってやって」と言われた教務部の事務員は、いままでそんなことはなかったため大丈夫だろうと、後回しにしたところ。
魔法学概論の見学申請をしていた全ての講師から詰め寄られ、半泣きになったのだった。




