幼女魔法講師は再び基礎授業をする
雅琵が学内で「やべぇ奴」認定され、それが浸透した頃。
二回目の月曜日、雅琵の受け持つ魔法学概論の授業の日が来た。とはいえ、基礎も曖昧な状態で本当の意味で授業ができるはずはなく。
「はーい、皆ごきげんよう! 今日は『呪文とはなんぞや?』ってのやるよー」
そう言いつつ雅琵は作っておいた資料を配る。前回のときに板書だけだと辛いという言葉が教務部にいったらしく、魔法薬学の教室の場所を聞きに行ったときに言われたのだ。
ちなみに部数は九部である。後ろの方にいる講師たちが悲鳴を上げていたが、あのひとたちは生徒じゃないので。
「ソラユキ先生、『呪文とはなんぞや』ってなんだ?」
「そのままの意味だよ。じゃあ聞くけど、呪文ってなに?」
「呪文はイメージを具現化するために必要な言葉です!」
ヴァネッサと雅琵の会話に答えたのは、アリリアだった。
それ以外ないだろう、と言わんばかりに強気に放たれた言葉を、雅琵は撃ち落とす。
「違うんだなぁ。呪文の文言は、いわば時間稼ぎだよ」
「は!?」
「時間稼ぎっすか?」
「どういう意味かね?」
「世界が魔法・魔術を世界に反映するための、時間稼ぎさ。まず、呪文は大きく分けて二つの分類に分けられる。属性と情報、この二つを組み合わせることによって事象に反映される」
ひょいと指を振るってチョークを操り黒板へと、書いていく。
きょとんとした様子の生徒たちとざわつき始める講師たち。その対比は面白いが、もうちょっと静かにならないかな、と雅琵は思った。注意する側が騒いでどうするんだ。
「まず属性について。まずは呪文を、属性ごとに振り分ける必要がある。分類は火、水、木、土、雷、無属性ね。無属性には闇分類の〈拘束〉とかが入るよ。これを属性化という」
「属性ごとに分けることに意味があるんですか?」
「いい質問だね、アリリア・ツェルン。君は見たことも聞いたことも使用用途もわからないものを探すとき、どうする?」
「それ……は、頼んできたひとに聞かないと」
「そう! だから属性化が必要なんだ。例えば『朝置きたら目覚し時計がなくなっていた、一緒に探してくれ』って言われてキッチンとかバスルームを探すことはないだろう? そういった無駄を省くための属性化ね」
「なる、ほど」
納得したようなしてないような顔をして、アリリアは頷いて板書を写す作業に戻った。
「次に調整。これは単純に必要とされる魔力量と魔術を使った者の魔力量が釣り合うかどうか、またその他の要因で釣り合わせることが可能かどうかの調整」
「ソラユキ師よ、その他の要因、とはどういうことだね?」
「ふむ、簡単だよ。魔法使いの魔力か、魔術師の魔力かってだけ」
「……両者にはそれほどまでに違いがあるのかね?」
「君たちが考えうる限りのご馳走と搾りかすくらい違う」
「我々の魔力は搾りかすだと?」
「反対に聞きたいけど君たちは健全な魔力のためにどんな努力をしてるんだ?」
「健全な、魔力の……ために?」
搾りかすの魔力だと言われて、剣呑な雰囲気が生徒からも後段の講師たちからも流れてきたが、反対に雅琵がそれを問えば「何を言っているのかわからない」という反応になる。




