幼女魔法講師は黄金の一滴を作る
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「『希少な材料をふんだんに使うこと』……?」
「そう。爆烈いちごのヘタと不死鳥の涙は」
「刻んでも一滴をより細かくしても相性が悪い、なのに何故使うのかと」
「違う、相性が良すぎるんだ。相性が良すぎて、そのエネルギーが高熱化してヘタにかかった不死鳥の涙は飛び散る。まぁそこらへんは追々だけど。とにかく必要なのは『希少性』なんだ。『希少な材料』には魔力がたまりやすいからね」
「しかし他の魔法薬では材料の相克などを考えなければ」
「普通の魔法薬ならそうだろうけど、どんな魔術師も欲しがる黄金の一滴がそこらへんの傷薬と同じと思うの?」
「……」
答えは否である。学生、それも一年生でも作れる簡易な傷薬と幻の黄金の一滴、同じなはずはない。
ならばこの幼い少女の言うように、「通常の作り方でははかりえない材料の使い方をする」のはある種当然ではないのか?
そんな考えがエヌ・フレイルを支配する。
学生たちはなんかすごいものを作るらしい、ということで作っている薬を冷まし、瓶に入れ提出台に置くと、雅琵の机の周りに集まってきた。
「さて、ここで欠かせないものがあります」
「は? まだあるのか?」
「虹猫のあくび、森蝙蝠の超音波、不死鳥の足音、ヤグルマエビギクの跳躍、ドラゴンの羽ばたき、爆裂いちごの咀嚼、原種の真珠草の花びらをむしる音、シナの木の朝露を落とす音。これらをすべてミックスした音源がこちら」
「……は? 音源?」
「この音を聴かせながら作ります」
「笑えない冗談の類か?」
「残念、真実でーす」
一回かけてみるか、と雅琵が取り出した小箱……本当に小さな箱を開け、中に埋まっている水晶にそのか細い指が触れた途端。ヴォルは自らの耳をふさいだ。
ふぁぐぉぉぉきぃぃぃばしゃくぶぴちゃぴょん。
言葉にすれば……できたとしたらこんな感じだろうか? とにかく激しく雑音どころか害音でしかない音が流された。
耳を抑えてうずくまっている者も多い。エヌ・フレイルもその一人だし、獣人属の多いトリコローズや人属のドライフォルカラーなども多い。
反対に、眉をしかめたり、不快そうな顔をしつつもわりと平気そうなのは、精霊や妖精が所属するスリィピアだ。
「これを流しながら作れるのが、黄金の一滴ね」
「オレはこんなトチ狂ったものを作ろうとしていたのか……」
「トチ狂ったものってなんだこら」
思わずあまりの悪音に本音が漏れてしまったエヌ・フレイルだったが、周りの生徒たちも大きく頷いている。ついでにヴォルも。
そこまでかなぁ? と不思議そうに小首を傾げる雅琵を引いた顔で見ながら。




