幼女魔法講師は魔法陣を描いている
「いや、そんなに巻物あっても使わないから」
「……チッ」
軽く舌打ちをされた。あわよくば今後の授業の分も含めて作らせようとしたのだろう、抜け目がない。
もちろんその意図を察した上で、知らないふりをして断ったのだが。
「せっかくだから、魔法陣で作るか」
「何!?」
雅琵は腰の四次元倉庫の中から真っ白な木の杖を取り出す。所々に赤い装飾と金の持ち手が施された杖。
だが、この世界において杖とは身の丈ほどの大きさがあり、晶石がいくつもついているのが普通だ。よって、雅琵の杖はただの白い装飾の入った木の棒としか見られなかった。
「なにあれ?」「知らん」「木の棒? なんか装飾されてるけど」「何に使うんだ?」「さぁ……?」
ざわざわと大声ではないものの騒ぐ生徒たちの代表として、エヌ・フレイルが口を開く。
「すまない、ソラユキ先生、それはなんだ?」
「これ? ボクの杖」
「杖!? それが……か?」
「まぁまぁ、やればわかるから。魔法陣、刻んじゃうね」
「〈あおき瞳の対価を示せ〉」
その言葉とともに杖を振ると、空間が歪み、そこに碧色の線が走って幾つもの魔法陣が空中に浮かぶ。それぞれが鼓動するように、リズムを刻みながら、大きくなったり小さくなったりしている。
雅琵は杖で魔法陣を、ひょいひょいと選んで配置していく。
それは確かに、杖だったのだ。
「この、『炎を閉じ込める』は少し細く小さく『風で上に噴出し一定に保つ』をちょっと大きく、『炎を灯す』魔術陣を極小さく……うーん、『動力源を使用者の魔力』に書き換えて。ついでに『火力調整は使用者の魔力を使う』っと……こんなものかな?」
今まで、魔法陣といえば丸の中に収められているのが普通だった。しかし雅琵の造った魔法陣は特に仕切りはなくそれぞれを歯車のように組み合わせて外と中の区別としている。
正直、こんな魔法陣は見たことがない。普通に使えるのかも怪しいそれに、エヌ・フレイルの眉は渓谷のように深くなっているが、雅琵は気にした様子もなく。
「鍋、鍋……」と言いつつ四次元倉庫のウエストポーチを漁っている。
「ソラユキ先生、鍋なら」
「あ、あった」
予備のものがある、そう声をかけようとしたエヌ・フレイル。しかし、それより先に雅琵が四次元倉庫のなかからがしゃん、と美しいガラスの鍋を出してしまった。どう見ても入る大きさではないのに。そのことに目を見張っている間に、材料と思わしきものもウエストポーチから取り出す。
「虹猫のひげ、森蝙蝠の子どもの歯、不死鳥の涙、ヤグルマエビギクの殻、ドラゴンの翼の被膜はワイバーンのものでいいか、あと爆烈いちごのヘタ、原種の真珠草の花びら、シナの木の朝露。うん、これだけあればいいか」
「まって、待ってくれ! 材料が! 材料一つで国家予算の半分並みなんだが!?」
「だろうね。重要なのは『希少な材料をふんだんに使うこと』だから」
キリがいいので(?)三日間くらいお休みします。




