幼女魔法講師は『バイト』を受ける
火曜日の夜、カランカランとベルの音を鳴らしながら購買店へ入ってきたのは、ヴォルと雅琵だった。
それに対して反応したのはエプロンをつけた、小さなくまのぬいぐるみ。
「はぁい! お久しぶりね、今日は何をお求めかしら?」
「出来るだけ強い敵のいる、討伐依頼ってある?」
「今日は『バイト』をお求めなのね。いつもの条件かつ、出来るだけ強い敵の討伐ってことであってるかしら?」
「うん!」
「あら素直。じゃあ、足がつかなくて、単発で、賃金が高い、かつ強力な相手……これなんかどうかしら?」
陽気に手を振り喋ったかと思うと、ひょいひょい身軽にデスクの中を漁り、一枚の少しシワのある紙を取り出して、雅琵に差し出す。
『ワイバーンの巣の討伐
発注者・北の諸国連合
内容・岩山にワイバーンが住み着き、繁殖。近隣の村や町を襲っているため、巣ごとの討伐を早急に求む。現在、五十頭のワイバーンを確認。訂正、百頭に変更。
報酬・二千万ギリン → 三千万ギリン』
「あ、いいね! これ受ける! ヴォルは?」
「いいんじゃないか?」
ヴォルは前足をデスクにかけて立ち上がり、依頼書を覗き込んで頷く。ヴォルのお眼鏡にも適ったようだ。
「明日討伐に行って来ようかな」
「はぁい、じゃあ依頼受諾っと。あ、ここオーロラが見えるらしいのよ、素敵よねぇ」
「へー、オーロラかぁ。見たことないなぁ……あ。ありがとね!」
「雅琵」
「そうだ。これもいつもと同じ百ギリンでいいの?」
「充分よ、じゃあ購入ありがとうございました!」
ここはイヴロッサ・アウル・カレッジの購買店である。くまのぬいぐるみが経営している不思議なこの店は、欲しいものが揃わないことがないと言われていて。カレッジの七不思議にも数えられている。
在学中に「売り切れよ」と言われたら隕石が降ってくるとまで。
そう、ここの店は欲しいものを揃える。たとえそれが禁書だろうが漫画本だろうが、情報だろうが仕事の斡旋だろうが、客の欲しいものを揃える店である。




