幼女魔法講師は説明している
「最後の要素、⑤コンディション。正直これがこの中では一番難しいって言ってもいいかな」
雅琵の言葉に、眉を寄せるものが多数出た。
今までだって難しいというか新しい単語や知識ばっかりだっただろうが。といったところか。
「魔力の状態のことなんだけど、これ、精神状態や体調に比例するんだよね。三つに分けて、通常の状態、平常時の場合ね。次に抑制の状態、緊張してたりやる気が起きなかったりすると、魔力の練りがうまくできなくて威力が弱くなる。最後に混乱の状態、体調不良や精神面の衝撃、恐慌してたりするとなるんだけど、完全に発動しない……何も起こらないか、もしくは暴発するかの二択ね」
「二択ね……ってそんな……」
「だってその通りだから。で、このことからわかるように魔術にも魔法にも運要素なんてない。どれかがうまく出来ていないと魔術は使えなくなる。『一回出来たんだから次もできるだろう』とか安易に考えて無理やりやらせて暴発、なんてことが起こらないように気をつけてね」
雅琵のあんまりな言いように、一同は口を閉ざす。講師の中には以前の研究発表会で、うまく魔術が使えなかったのはこのせいかと大きく頷き納得している者も多数。その中で、ヴァネッサが手を挙げた。
「ホロウオーバーとは違うのか?」
「あれも確かに暴発と言えなくもないけど、種類が違う。あっちはリーズが人工精霊……つまり杖から溢れ出した状態だってことは知ってるよね? リーズ自体は魔術や魔法の不満や疲労、人工精霊にかかる負荷が積み重なって出来る淀みだから全然違うね」
「へー! ソラユキ先生は物知りだな!」
「まぁね!」
「……リーズが何かは具体的にわかっていないはずなのだが……」
微妙な顔をしたシャミャンに、ヴァネッサ以外の生徒、講師は大きく頷く。
教室の後ろの方では講師たちが、ぼろぼろと溢れるように出てくる新しい知見に興奮が隠せていない。
このまま他にも新しい知識をこぼさないかな、と講師たちが心躍らせていると、無情にも鐘の音が鳴る。
「あ、授業終わりだね」
「そ、そんな!」
「ボクが担当するのは魔法学概論だけだから、また来週だね! お疲れ様、次の講義もがんばりたまえー」
手を振った雅琵に、この一限の濃密な知識に頭が若干くらくらしている生徒たちは、恨めしげに指で黒板消しを操るその小さな背中を見る。
やがて全て消し終わると、浮遊していた黒板消しは置かれ、「ヴォルー」雅琵は気の抜けた声でヴォルを呼ぶ。
「理事長室か?」
「もちろん。範囲外手当むしりに行こうぜ! ついでに呪ってやる!」
「ついでなのか……」
そんな物騒な会話をしながらひらりとすばやくヴォルに跨がると。
「じゃーねー!」
教室をさっさと後にしたのだった。




