幼女魔法講師は説明する
「と、いうわけで。さっきのが『神』や上位の存在に向けた魔法は自ら消える、ということの証明だよ」
あっさりと、雅琵はいまだ心臓に悪い存在と光景を見せられた面々に告げた。
未だ呆然とする人々の中で、ゆっくりと手を挙げたのはフェルンだった。
「証明は、その、わかりました。そちらの大狼が『神』に等しいということも」
「わかってもらえて何より、で? なんか問題あった?」
「いや問題しかないでしょう!? 何故『神』なんて存在が……いや、これはもう置いておくとしても。万能呪文! 何故ソラユキ先生は万能呪文が使えるんですか!?」
「なんで使えるって言われてもなぁ。使えるから、としか」
使えるから使える、そう閉じようとした雅琵に、ヴァネッサが切り込んだ。
「つまりソラユキ先生は真理に一番近いってことか?」
「真理という曖昧な定義は好かないけど、この世界の構造や仕組みについて他のひとよりは少し詳しいかな」
万能呪文はごく短い呪文で、全ての呪文の効果を引き出せる。無詠唱は詠唱しない分魔力を多く持っていかれるが、万能呪文はごく僅かな魔力で呪文の効果を顕現するのだ。
そして、何よりも。
真理に最も近いものしか使えない。
ということは、万能呪文を使える雅琵は真理に最も近いということになる。本人は真理という言葉があまり好きではないようだが。
この世界にいる五人の魔法使い、そのうちの最も若い魔法使いである雅琵。他の四人の魔法使いは全員が老人だ、それほどの年月を魔法に捧げてきたのに、誰もこの幼い少女に敵わなかったのか。
軽い雰囲気で頷いた雅琵に、全員、目眩がする。
天才なんて言葉じゃ追いつかない、どれだけの才能があれば。
「まぁ証明は終了ってことでいいね? じゃあ次いくよー」
「……はい」
「②ステップは単純に音や声の大小、大きければいいってもんじゃないけど小さすぎても魔術に気づかれないから。③テンションは音や声の高低、高すぎると不快に感じる魔術がいるから気をつけて。低すぎても聞こえないから普通に喋りかける感じがいいかも。④ボリュームは……まぁ言わなくてもわかると思うけど自分の魔力量以上の魔術を使おうとしても応えてくれないよ、ってこと」
「待って待って待って」
「説明早い!」
「一応黒板にも書いてあるからそっち見なよ」
「黒板に書いてあるのが最小限すぎるんですよ!」
生徒たちどころか講師たちまで焦ってノートやメモをとる始末。「説明が早い!」と叫んだのは講師陣の中の誰かだ。
わかりやすく噛み砕いて喋っているだけで、論文にもほぼ同じことが書いてあるのになぁ、とその様子を眺めながら雅琵は思う。




