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キオクノカケラ  作者: 真那月 凜
1/5

第1話

「李砂」

「ん?」

「帰ろ~ぜ」

「あ、うん」

李砂は慌てて荷物をまとめた


「あ・・・」

慌てていた李砂の手から持っていたものがなだれ落ちる


「慌てなくていいって」

彼は笑いながらそばに来て落ちたものを拾い集める


「拓弥君優し~」

そばにいた女生徒がからかう


「だろ~?でも李砂にだけだぞ」

拓弥は笑顔で言う


「からかいがいの無い奴・・・」

「何とでも言え。いこーぜ」

「うん・・・」

李砂は拓弥について歩き出した


「相変わらず意外性大のカップルだな」

「言えてる。拓弥は何であんな子選んだのかな?元はいいと思うのね。でも影ありすぎじゃない?」

「言えてる。案外成績のためだけだったりして」

かすかに聞こえてくる彼らの言葉に心臓が脈打つ

彼ら同様李砂自身も拓弥が自分を選んだ理由がわからないままだった


そう思ったとき頭の中に一瞬映像が浮かぶ

誰かに囲まれている女の子の姿だ


『また・・・』

いつごろからかその映像だけが現れだした

でもそれがなんなのかは一向にわからなかったためさほど気にも留めていなかった


「今日さ」

「え?」

「今日の帰り駅前いこーぜ?」

「あ、うん」

あまり乗り気ではなかったものの拓弥の嬉しそうな顔を見ると嫌とはいえなかった


「ねぇ拓弥君」

「ん?」

振り向いた拓弥の優しい笑顔に言おうとした言葉が声にならなかった


「・・・何でもない」

そう言って視線をそらした李砂に拓弥が寂しそうな顔をしたのに李砂が気づくことはなかった





「よ~」

「珍しいじゃん。ちょうどいいから入ってけよ」

「いいのかよ?来週大会だろ?」

「だからだよ。お前のテク盗んでやる」

ストリートダンスをしている彼らはそう言ってニヤリと笑う


「俺別に盗まれるようなテク持ってないぞ~?」

「いいからさ、季砂ちゃん拓弥借りるぞ?」

「悪い季砂」

「いいよ。私ココで見てるから」

李砂は笑顔を作って言うとすぐそばのベンチに座った


「サンキュ。コレ頼む」

拓弥の上着とカバンを受け取る

そして李砂は拓弥達のダンスに見入っていた


学校では休憩時間にバスケやサッカーに繰り出して皆で走り回る

放課後は空き地での草野球やストリートダンス、バンドに入れてもらってその中心で笑っている拓弥

李砂はそんな拓弥をそばで見ているのが大好きだった


自分が動き回れない分拓弥の色んな動きを見て楽しむ

単純にこんな日常が続くと思っていた

少なくともこのときまでは・・・





李砂のそばで拓弥達を見ている男がいた

その男は1時間半飽きる事無く彼らの動きに見入っていたかと思うと李砂のところに戻ってきた拓弥に声をかけてきた


「俺こういうもんなんだけどさ」

彼はそう言って拓弥に名刺を渡した


「スカウトマン?」

「あぁ。単刀直入言おう。モデルしてみないか?」

「モデル?」

拓弥は首をひねる


「ただのファッションモデルの仕事はとらない。スポーツブランドを主にした仕事を請け負っている」

「はぁ」

「つまりCMのプロモや商品開発上のプロモなんかにも出させてもらっているんだ」

「・・・」

「キミの動きは今見せてもらった。ウチとしてはぜひともキミのような人材が欲しいんだ」

彼はそう言って拓弥をじっと見る


「ルックスがいいのはその辺にいくらでもいる。でもそのルックスに動きが伴わなければウチでは仕事が出来ない」

「すげーじゃん拓弥。やれよ」

「え~?」

拓弥はしばらく悩んでいた


「季砂は・・・どう思う?」

不意に拓弥は聞いた


「わ・・・たし?」

李砂は唖然とする


「そんな大事なこと私に聞かないでよ・・・」

頭の中で『モデルなんてしないで』そう願いながらも何もいう事が出来ない


「そうだよな・・・」

拓弥は一瞬寂しそうな顔を李砂に向けた


『え?』

その表情に胸をわしづかみにされたような気さえした

でも李砂には何もできない


「じゃぁこうしないか?」

「え?」

「今からそこのビルで撮影があるから一度見学してみてから考えるってことでどうかな?」

彼はそう言って駅前のビルを指差した


「・・・こいつも一緒でい?」

「もちろんだよ。決まりだ」

彼はそう言ってビルのほうに促す


「拓弥君?」

「いいからお前も来いよ」

拓弥の言葉には少し棘があった

そのことに戸惑いながらも李砂は拓弥に続く


ビルの最上階にあるスタジオに案内されてため息が洩れた

1面の窓から形容しがたい夕焼けが見渡せる


「キレイ・・・」

思わずつぶやく李砂に彼は微笑んだ


「今日はこの夕日をバックに撮影なんだ。その辺にいて」

言われるままに李砂たちは立ち尽くす


目の前で撮影が始まる

族に言うカッコイイ男が2人とてつもない勢いで動き回っている


「すげぇ・・・」

拓弥のその言葉に李砂はドキッとする

その先は容易に想像することができた


そして拓弥はその予想を裏切ることは無かった

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