第45話 復讐の幕が開く
「こ、この…死にぞこないの魔女め…」
もはやジークハルトは私に対する殺意を隠す事も無く睨み付けて来る。
「チッ!またしても失敗するとは…なんてしぶとい娘だ…」
叔父は忌々し気に私を見て舌打ちする。しかし、どんな態度を取られても私はもう何も感じる事は無い。
「それよりも…あなた方は私の命を狙う為に、もうすで2人の命を奪ってしまいましたね?」
すると叔父がニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「フン…今更1人や2人の命を奪う位、どうと言う事は無い。そうだろう?ジークハルト」
「ええ、そうですね。伯爵」
2人は互いに頷きあう。その様子から分った。恐らくジークハルトと叔父は早い段階からグルだったのだ。そして私は一度たりともジークハルトの愛を疑った事はなかったのだった―。
「叔父様、その物言いでは…他にも命を奪った人達がいると言う事ですね?」
私の問いに叔父は答えた。
「ああ、そうだ。誰だか教えてやろう。お前の両親だ」
「…そうですか」
私は顔色一つ変えずに返事をする。
「何だ?そのすました態度は。お前の両親を殺したのは私だと言っておるのだぞ?聞いておるのか?」
「ええ。ちゃんと聞いております」
「チッ…。やはり魔女になったお前は人の心を失ったのだな」
もともと人の心を持っていない叔父にそんな台詞は言われたくない。次に私はジークハルトを見た。
「ジークハルト様」
「気安く俺の名を呼ぶな。醜い魔女め」
憎悪を込めた目で私を睨みつけて来る。私はそんな瞳を堂々と正面から受け止めなが問いかけた。
「貴方は私の事を一度でも愛してくれた事がありましたか?」
「は?また俺に同じ事を言わせるのか?初めてお前と会い、その黒髪を目にした時からずっと嫌悪していたと言っただろう。これ以上醜い姿で俺に愛を問うなっ!汚らわしくて虫唾が走るっ!」
吐き捨てる様に言うジークフリート。彼は私の存在を全否定した。
「そうですか…これで決心致しました」
この城の者たちを殺害するのに、遠慮はいらないと言う事が…ね。
「何だ?何が決心したのだ?」
私の言葉が気になるのか叔父が尋ねて来た。
「はい。この城を出ていく決心をしたと言う事です」
私はニッコリと笑みを浮かべた。
「何?」
「正気なのか?」
叔父とジークハルトが交互に尋ねる。
「ええ、本気です。私がこの城にとどまれば余計な被害者が出てしまうかもしれまん。それにジークハルト様にそこまで憎まれているのであれば、尚更出て行った方が良いでしょう?」
ジークハルトは私に名を呼ばれたのが気に入らないのか、殺気を込めた目で睨み付けている。
「そ、そうか?それでは…」
叔父の態度が軟化する。元々叔父は私の力に怯えているのが手に取る様に分っていた。
「はい。この城も財産も全てお譲り致します。今はまだ外が明るく、この姿のまま城を出れば目立ってしまうでしょう。人々に城から出て来た私を見れば魔女を囲っていたと世間から非難されてしまうかもしれません。なので今宵、私はここを出て行きます」
そう、あなた達に復讐する為に――。