表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/61

第35話 魔女の完成

 城へ戻ると、廊下ではフットマンやメイド達が慌ただしく働いていた。そして私の姿を見かけた彼らは一斉に悲鳴を上げた。


「うわあああっ!だ、誰だっ?!」

「キャア!誰なのっ?!」

「な、何者だっ!」


私はそんな煩い彼らを一瞥した。


「全く…この城の使用人たちは正当な主を知らないようね」


「し、知らないわよっ!」

「お前のような黒ずくめの人間など知るものかっ!」


フットマンが私を指さしながら叫んだ。


「黒ずくめ…?」


何気なく自分の来ているドレスを見て私は悟った。


成程…。


いつの間にか着ていたドレスは真っ黒に染まっており、髪は床に届きそうなほどに伸びていた。もはや誰が見ても私の姿は魔女そのものだった。


「フフフ…アハハハハハ…ッ!」


私は上を向いて高笑いした。

こんな姿に変わった自分がおかしくてたまらない。お望み通り本物の魔女になってやろうと心のなかで思っただけなのに、ここまで自分の姿が変貌するとは思ってもいなかった。

そして高笑いする私を恐怖に怯えた顔で見ている使用人たち。


「そうだわ…顔は…顔はどうなっているのかしら?」


ポケットに忍ばせておいた手鏡を見ると、そこには以前と変わらぬ青い瞳の自分の姿が映っていた。


「良かった…お父様とお母様から受け継いだ青い瞳はそのままだわ…」


そして震えて身動きすら取れなくなった使用人たちに命じた。


「アドラー家を名乗る偽者達は今何処にいるの?」


「だ、誰が…お前の様な恐ろしい魔女に…」


1人のフットマンが青ざめ、震えながらも気丈に答えた。


「ふ〜ん…大した忠誠心ね…。だけど私の言う事を聞いたほうが身の為よ?呪いを受けたくなければね」


呪いと聞いて彼らは震え上がった。私に人を呪いにかける能力があるかどうかは不明だが、この言葉は効果的面だった。


「は、はいっ!ご、ご主人様達はダイニングルームでお食事中でございます!」


ご主人様…その言葉に苛立ちが募った。

許せない…私から全てを奪った挙げ句、この城の主人を名乗る叔父を許してはおけない。感情が思わず高ぶったその時…。


ピシッ!ピシッ!


周辺の窓ガラスに亀裂が走った。


そして…


バリーンッ!!

バリーンッ!!

バリーンッ!!


周囲の窓ガラスが粉々に割れていき、派手な音を響かせて床の上に落ちていく。


「ウワアアアアッ!!」

「キャアアアッ!!」


割れたガラスが降り注ぎ、たまらず悲鳴を上げる使用人たち。

そうか…私には窓ガラスを割る力まであったのか。

まるで他人事の様に何も感じない心でその様子を見守った。


「私もダイニングルームで食事をするわ。彼らと同じ食事を…いえ、それ以上の物を提供して頂戴」


今迄残飯のような食事ばかり与えられてきたのだ。少し位贅沢を言っても大丈夫だろう。


「わ、分かりました…大至急お持ちします…」


ガラスの破片の洗礼を浴びたメイドが震えながら返事をする。


「そうだわ、ついでだから言っておくけど…いい?ここ、アドラー城の正当なる城主はこの私…フィーネ・アドラーよ。よく覚えておくことね」


『は、はいっ!』


使用人たちは声を揃えて返事をした。


「そう、それでいいわ…それじゃすぐに食事を持って来て頂戴」


そして私は怯える彼らの前を通り抜け…憎むべき叔父達の元へと向かった―。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ