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第20話 怯える叔母

 叔父の後に続き、日の差し込む明るい廊下を自室目指して歩いていると丁度バルバラ夫人がこちらへ向かって歩いて来るところだった。


「あら、あなた。どうでしたか?離れの様子は…ヒッ!!」


叔父に話しかけてきた夫人は背後にいる私の姿に気付くと、何故か顔面蒼白になった。


「叔母様?どうかされましたか?」


声を掛けると叔母は目を見開いて私を見つめ…歯をガチガチと鳴らして震え始めた。


「な、何故…フィーネがここにいるの…?いるはずがないのに…まさか、失敗…」


え?失敗?一体どういう意味だろう?


「この馬鹿っ!軽々しく思ったことを何でも口にするでないっ!!」


突如叔父が叔母を強い口調で注意する。


「知らない…私は何も知らないわ…」


しかし、叔母は叔父の声が聞こえているのか、いないのか返事をしない。が…なぜか私を凝視している。何か用事でもあるのだろうか…?


「叔母様?」


私が再び声を掛けると、叔母の肩がビクリと跳ねた


「う、嘘よ…そんな…生きているはずが…?」


「え?」


今何て…?


「いい加減にしないかっ!バルバラッ!」


ついに叔父が叔母を怒鳴りつけた。


「!」


叔母の目に脅えが走り、次の瞬間叔母はバタバタと何所へともなく走り去ってしまった。


「ま、全く…あいつときたら…」


叔父はそんな様子の叔母を見て忌々し気にうなった。


「あの…叔父様?」


肩で息をする叔父に声を掛けた。


「な、何だっ?!」


怯えた様にこちらを振り向く叔父。


「叔父様、今の叔母様の台詞は一体何ですか?」


すると叔父は大きく首を振った。


「知らんっ!わ、私は何も聞いておらんっ!そ、それよりも…も、今朝の朝食はき、期待してよいぞ?わ、私は厨房へ行ってお前の分の食事を部屋に運ぶように伝えて来るっ!」


そして叔父はまるで私から逃げるかのように大股で歩き去って行った。


「何なの…?一体叔父様も叔母様も…」


しかし、あの叔父夫婦が自ら私を避けてくれるのはありがたかった。離れから本館に移れたのは嬉しいが、叔父家族とは関わりたくなかったからだ。


「この調子でヘルマにも偶然会わないことを祈らなくちゃね」


そして再び私は1人、懐かしい自室へ向かって再び歩き始めた―。





「フフ…懐かしいわ…」


私は自分の部屋の扉の前に立つと感嘆のため息を漏らした。


思えば半年前…両親は突然の馬車事故でこの世を去ってしまい、そこから私の運命は変わってしまった。


けれど、こうして再び私は自分の部屋に戻って来る事が出来たのだ。

来月、私は成人を迎える。そうすればこの城の女城主になってジークハルトと結婚し…叔父家族には城を出て行って貰うように命令を下す事だって出来るのだ。


「もう少し、後少しの辛抱だわ…」



そして私は部屋の扉を開けて、自室へ足を踏み入れた。

これが自分が幸せになる始めの第一歩となるに違いないとこの時の私は信じて疑っていなかった。



ジークハルトが…どこにいるかも知らずに―。



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