「U」ウソみたいにごまかせない
お題「ユニフォーム」
放課後、本屋に行くためにたくみと待ち合わせた場所には、「おとなのおとこのひと」がいた。
「よっ!」
顔を上げてにかっと笑う彼は、いつもの、そう、いつものたくみだ。
ただ、どちらかといえばゆるりとした私服が多いはずのその全体のフォルムが、今日は見たことがないほどカッチリしている。
(スーツっっ!?)
普段とのギャップと初めて見るその雰囲気に、一瞬呼吸が止まる。
「おやぁー? ゆいこさーん?」
ニマニマと嬉しそうなたくみに、自分がどんな顔をしているのか嫌でも自覚させられる。
「〜〜っ! ぜんぜん! 似合ってないっ!」
「顔真っ赤にして言うセリフじゃないだろー」
新しいおもちゃを見つけたような、たくみの弾んだ声が悔しい。
内心の動揺を隠すこともできず、かといって今から素直にカッコいいよと言うことも出来ず、私はいつも通りを心がけながら口を開いた。
「な、ななななんで今日は、そんな、なのっ」
「コレ? ちょっと用事で」
余裕たっぷりのたくみの笑みが、やはり悔しい。悔しいのに、目が離せない。
これは、ずるい。
「とりあえず行こうぜ」
先に立って歩き出すご機嫌なたくみを、私は慌てて追いかける。いつも通りの何気ない話が入ってこなくて、相槌を打つのが精一杯だ。
ふと歩道横のビルのガラスに映る男女の姿が目についた。スーツを着こなした男の人と、ブレザーを着た女子高生。
たった数歳の年の差と制服、髪型やスタイルさえ、自分が急に子どもじみているような気がしてしまう。
おいていかれちゃう。
反射的にそう感じて、服の裾をつかもうと手を伸ばす。
その指先が、温かい手に包まれた。
びっくりして見上げると、前を向いたままのたくみが横顔で笑った。
「置いていかないよ」
優しい声に、心の声が漏れていたのかと思わず口を覆う。けれどたくみはくっくと笑うだけだ。
「今日のゆいこ面白いな。全部顔に出てる」
「えええーー」
内心もう完全に白旗を上げながら、子供扱いしてー、ともごもご言えば、
「今だけだから、な」
たくみは、意味深ににやりと微笑んでみせた。
スーツ、学生服のダブルユニフォームでした。
巽さんがお話されていたとおり、普段着ない人が着るのがいいんですよ!!(力説)