Don't choice.
まだ寒さを恋しく思う、秋が顔を覗かせる夏の深夜。なぜか私は肉まんの夢を見てしまい、どうしようもない焦りで目覚めてしまった。ふと時計を見ると午前二時である。既にコンビニが肉まんを販売していることを期待して、家を出る。ここで私が未成年であったならば、非行少年であるなと、小中高と意味もなく繰り返す非行防止教室の内容を反芻しながら歩を進める。ボケっとしていると、少し先から踏切の音が聞こえる。流石にこの時間では貨物であろう。肉まんには全く関わりのない話であるが、幼稚園児のころ、貨物列車が何よりも好きであった。それ故に今でも、踏切にかかるとイライラするのに、貨物であると分かった途端に、そんな感情は消え、なんでもないはずなのにワクワクする。お陰でなぜ焦って肉まんを求めていたのかはさっぱり忘れてしまった。構わない。薄暗い街灯の道をもうしばらく進むと、寝ぼけていたのが一気に覚醒するかのような光を放つ建物が今日はボンヤリと見えてくる。不思議なもので、寒さの中で食すものという固定概念がある肉まんだが、この時期には既にレジ横に鎮座している。肉まん、ピザまん、あんまんに加え少しばかり贅沢そうな数種類が並び、その光景にホッとした。一直線にレジに向かうのではなく、対角にある飲料コーナーに向かう。金儲けしか頭にない日本の法律のせいで、ビールがビールではない。しかし、ホンモノを飲んだこともなく、貧乏舌である私には金色でアルコールが含まれていれば充分だ。間違ってもストゼロは飲んではならない。さて、アテの肉まんはどれにしようかと急に悩み始める。確か、家を出た時は肉まん一択であったはずが、ビールには酢醤油と肉まんより、子供っぽいピザまんの方が良いのではないかと左手に持つビール缶が囁いているようでならない。肉まんといえば、幼い頃は、あの僅かに光沢のある生地が好きでフワッとした部分だけを食べ、本質である肉、乃至、肉と生地の調和などは一切考慮していなかったが、あれは愚行である。確かに好きだ。しかし、残った部分をもう生地がないのだと悲しい気持ちで食べる虚しさとは縁を切った。店員の手によって黄色く丸いモノが袋に入れられるのを一挙も見逃さないように見つめる。はたから見れば変質者である。ビールのことなど考えていなかったにも関わらず、真っ先に求めたのだから、自分でも納得する。帰り道は熱帯夜を全身で実感しながらであった。